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街が北へ拡大していくのとあわせて…

 開業当時の新大阪駅周辺は、その段階では市街地とはいえなかった。しかし、その後の千里ニュータウンの開発などもあって大阪の市街地は北へ拡大。新幹線のターミナルの足下で在来線も地下鉄も通り、さらに新御堂筋という大動脈もお隣、クルマを使えば伊丹空港もほど近い。そんな最高の利便性を持つ町が発展しないわけがない。

 大阪駅近くにあった繊維問屋街がまとめて新大阪駅北側に移転してきたのが1969年、それが新大阪センイシティーとして改称したのは1969年のことだ。

 それ以降、年を追うごとに新大阪駅付近は市街地化していった。市街地といっても繁華街のようなものではなく、むしろこの町の特徴はオフィス街。とりわけ、駅の北西側には2001年に誕生したニッセイ新大阪ビルをランドマークに、いくつものオフィスビルが建ち並ぶ。

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 駅の東側(在来線側に東口という地味な出入り口がある)は比較的小さな規模の雑居ビルがあり、あとはマンションなども目立つ。ところどころで見かける公園が、どれもあまり整備されていないのが気になるところではあるが、このあたりも大阪の市街地の一部といって遜色がない。

 さらに新幹線のターミナルらしく、ホテルだっていくつも建っている。駅に直結しているのはレム新大阪という阪急系列のホテルだが、ほかに多数のビジネスホテルがある。駅の2階・1階部分には飲食店もたくさん入っているので、大阪らしいグルメを楽しむのにも充分だ。

 

 それでもどうしても繁華街が欲しければ、デルタ地帯をくねくねと歩いて抜けて、まっすぐ南にゆけばよい。そうすれば、阪急京都線の南方駅、地下鉄御堂筋線の西中島南方駅付近まで約10分。このあたりはいかにも大阪下町の繁華街といった雰囲気を湛えている。

 新幹線で新大阪駅にやってきて、そのままあっさりと在来線や地下鉄に乗り換えてしまうのもいいだろう。だが、たまには新大阪の町を歩いてみてはどうだろうか。デルタ線と新御堂筋のおかげで歩きにくいことこの上ない迷宮街ではあるが、だからこそ単純なターミナルとは少し違った時間を過ごすことができる。

 キャリーケースを引きずった出張族が歩いている新幹線の改札前もいいけれど、殺伐とした雰囲気の一角だったり、ビジネスマンが行き交っていたり。人の流れに逆らって北東側に出てみると、新大阪駅の駅前なのに人っ子ひとりいないという、そんな風景が広がっている。新大阪駅、ただ単に乗り換えのターミナルに留まらず、意外に奥が深いのである。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。