アシスタントが任された「素材探し」と「コラージュ」
Aさんはこう振り返る。
「最初にアトリエに足を踏み入れた時から異様な雰囲気はしていました。杉田さんのアトリエは全く掃除がされていないごみ屋敷の状態だったんです。トイレの便座には人糞がこびりついていましたし、キッチンの床には捨てられていないゴミ袋が放置されていました。生ごみ臭がひどくて、部屋を出た後もしばらく鼻の奥に臭いがこびりついて消えませんでした」
Aさんが働いている間、キッチンやアトリエが掃除されることは一度も無かったという。トイレはAさんの頼みで一度だけ掃除されたこともあったが、すぐに元の汚さに戻ってしまった。
自分自身もアーティストとして活動しているAさんは自身の創作活動の合間を縫って杉田氏のアシスタントをしていた。著名なアーティストのアトリエで働くことで、自分の創作活動にも生かせることがあるかもしれないと期待していた。
ところが杉田氏の創作方法は同じ画家として倫理観を疑うものだったという。
「杉田さんから任された作業には『素材探し』と『コラージュ』がありました。『素材探し』は、杉田さんがネットで拾ってきた写真に組み合わせる素材を探し出す作業です。『コラージュ』は、杉田さんが拾ってきた写真と私が見つけてきた“素材”の配置を考えて作品の下地を作る作業のことです。
杉田さんからはネットで拾ってきた写真を見せられて、『これを「夢可愛い系」で素材探しして』とか『「耽美」な感じでコラージュして』といったように簡単なキーワードを伝えられる以外は、ほとんどその作業はこちらに丸投げされました。
杉田さんからはそうした作業でのやり取りの中で『君のIQに期待している』などと聞こえの良いことを言われましたが、結局は私がデザインしたものを自分の作品に使っていただけだったのだと思います」(Aさん)
Aさんが杉田氏に送ったという“コラージュ作品”の中には6月15日から20日まで大阪・心斎橋パルコで催された杉田氏の個展で販売されていた作品と酷似しているものもあった。杉田氏はこうして作られたコラージュ作品を、キャンバスの上にトレースしていたとAさんは語る。
「杉田さんはこちらが作成したコラージュ写真をコンビニで拡大コピーしてきて、そのコピーをキャンバスの上に乗せるんです。そして、その間にカーボン紙を敷いて、コラージュ写真をキャンバスにトレースしていたのです。
その後、トレースした作品に絵の具を乗せるときもキャンバスの近くにコピーした見本を貼っていました。ただ、そうした行為が後ろめたかったのか、『これ写っちゃまずいよね』とインスタに投稿する制作風景の動画を撮影する時はコピーしたものを外していました」