紫色の髪の毛を右肩に流した女性の絵画と写真。絵画の方は目が蝶で隠されているが、2つの作品の色調や構図はまったく同じである。
前者は画家の杉田陽平氏(38)の作品であり、後者は韓流アイドル「BLACK PINK」のメンバー・ROSEの写真集からスキャンされた写真だ。
「杉田さんの作画方法は他者の撮った写真などを素材にして無断でトレースする、いわゆる“トレパク”と言って良いような手法です。SNSなどで気に入った写真をピックアップして、他の写真と組み合わせる。その上にカーボン紙を敷いてトレースします。そして、写真を見ながら色を乗せていくんです。創作の過程で他の作品を参考にすることはありますが、杉田さんの場合は明らかにやりすぎだと感じました」
こう語るのは杉田氏のアトリエでアシスタントとして働いていたAさん。Aさんは文春オンラインの取材に対し、杉田氏の“トレパク疑惑”についてその詳細を明かした――。
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恋愛バラエティー『バチェロレッテ』で一躍人気に
杉田氏は武蔵野美術大学在学中から注目されていた若手画家だ。2009年に東京都知事だった石原慎太郎氏が作品を買い上げたことでも話題になった新進気鋭の芸術家である。
しかし、その作品以上に彼の名を世に知らしめたのは、2020年にアマゾンプライムで配信された恋愛バラエティー番組『バチェロレッテ』への出演だった。
「『バチェロレッテ』は1人の女性をめぐって17人の男性が恋人の座を争う恋愛リアリティーショーです。アクの強い参加者の中で、杉田氏は純朴で庶民派な性格が視聴者の共感を呼び“杉ちゃん”という愛称で呼ばれるなど人気を集めました。番組の結末としては誰も恋人にならないというオチでしたが、杉田氏は最終候補の1人として、正統派のセレブイケメンと恋人の座を争いました」(芸能記者)
美術界でも成功を収め、番組出演を経て視聴者からの人気も得た杉田氏――。番組に出演したことで作品への注目度も上がったため、アシスタントを雇うようになったという。
2022年3月、杉田氏はSNSで作画アシスタント募集の告知をし、それを見たAさんは応募を決意。何度かダイレクトメッセージでやり取りをした後に、面接を経て採用が決まったという。憧れの画家のアトリエで働くことが決定したAさんだが、すぐに違和感を覚えたと語る。
Aさんが目の当たりにしたのは“盗作”と紙一重の制作方法と、スタッフのやりがいを搾取する杉田氏の素顔だった。