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Aさんの作品も制作者を明かさず杉田氏のインスタグラムに…

「頼まれたとはいえ、トレースや下絵の作画などに関わっていたことは、杉田さんのファンを騙していたことになるのではないでしょうか」

 Aさんはそう悔いている。

杉田氏の作品の下地となったコラージュ
コラージュを元に作成された作品

 さらにAさんの作品自体も杉田氏によって勝手に使われたこともあったという。

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「アトリエで働き始めてすぐ、コピー用紙にチューリップの絵を描いたんです。練習のつもりでしたが出来が良く、杉田さんも気に入ったようでアトリエに置いておきました。その約1か月後、杉田さんからメッセージが届きました。『前にかいてくれたチビチューリップ可愛いから(インスタの)ストーリーに参考作品としてあげるね』と。

杉田氏からAさんへのメッセージ。実際にはこの連絡より前に自身のインスタグラムに作品をアップしていた

 杉田さんのインスタを確認すると、私への連絡よりも前にすでに投稿がアップされていました。その時は仕方なく『了解です』と返事をしましたが、勝手に私の作品をSNSにあげた事も許せませんし、何よりまるで自分の作品のように扱い、私の作品だと明示してくれなかったことに怒りを覚えました。多くの人があの絵を杉田さんの作品だと勘違いしていたらと思うと、悔しくて仕方ないです」

 6月19日、Aさんが訴えた作品の制作過程における疑惑について、個展開催中の杉田氏に取材を試みたところ「イベントへの登壇があるので、後ほど時間を作ります」と発言。しかし、その後も取材班に連絡は無かった。

 後日、杉田氏に書面による事実確認を行った。

 自身の作品のトレース疑惑については「大きな作品を作る場合、A4サイズで元絵を作り、それを拡大コピーしてキャンバスにトレーシングペーパーで写してバランスをとることがあります」と回答したものの、そういった手法について「近年の制作過程において何だか(※原文ママ)のトレース作業をした上で著作権侵害にあたる作品は、ないと認識しております」と回答した。

 前述の「BLACK PINK」の写真や雑誌の広告をトレースしているとされた作品の制作過程については、自身の創作性を主張した。

「当該の作品制作において元となる素材から特徴を変えて、新しい創作性を生み出しているものだと認識しています。現代美術のアプロプリエーションという手法で制作しています。代表的な作家として、リチャード・プリンス、アンディ・ウォーホル、ジェフ・クーンズらが挙げられる方法論で、文脈を変えて再提出をするという考え方です」