――市井さんの履歴書を見た採用担当の方はびっくりするでしょうね。
市井 アパレルのときは写真を見た担当者から連絡がきて、「ご本人ですか?」と聞かれました。「そうですよ」と……。ただ履歴書にモー娘。のことは書いたことないですし、そんなことは書かないですよ(笑)。
――そうなんですね。ただキャリアとして実際、お仕事を成し遂げたわけで……。
市井 まあたしかにそうか……。じゃあ次に転職するときは書いてみようかな……(笑)。
「元モー娘。」という肩書を背負うこと
――芸能関係の裏方に回るとかならわかるのですが、紅白を2度経験した国民的スターがパートをするというのはあまり聞いたことがない気がします。
市井 そこもモー娘。時代、本当に厳しく育てられた基礎が非常に大きかったと思います。電車通勤で給料制でしたしね。それがあったから卒業してもわりと普通にやれるのかな、と。
加えて、「アイドル」「芸能人」というものへの固定観念が強すぎるのではないでしょうか。実際に皆さんがイメージする生活よりよっぽど、普通だと思いますよ。
――「モーニング娘。の市井紗耶香」という肩書がプレッシャーになることもありましたか。
市井 思い返してみれば、たしかに「元モー娘。」という肩書がプレッシャーに感じる時期もありました。もっと「個」として見てほしい、肩書を外した私自身で評価されたい気持ちだったと思います。
ただ年齢を重ねるにつれていつの間にか、むしろ「モーニング娘。の市井紗耶香」という時代があったからこそ今でも仕事ができているんだ、という感謝の気持ちに変わっていました。
今もテレビのテロップでは「元モー娘。」。でもそれでまったくいいと思っていますし、そこから生まれる縁を大事にしながら、新しいチャレンジをしていきたいんです。
写真=三宅史郎/文藝春秋
衣装=MIESROHE
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