夜空に輝く、あまたの星たちの中に「カープ」という名前の星があるのをご存知だろうか。小惑星番号44711「Carp」。元久万高原天体観測館の職員中村彰正さんが1999年に発見し、命名した小惑星である。

 そして今年1月。あるカープレジェンドの名前が小惑星に付けられた。その名は「Kitabeppu」。現在病床で現場復帰を目指し、病魔と戦う元広島カープ背番号20、北別府学さんのお名前だ。

現役時代の北別府学 ©文藝春秋

小惑星「Kitabeppu」を発見するまで

 実はこの小惑星の名前は北別府さんへのプレゼント。プレゼントの主は愛媛県松山市にあるNPO法人「スペース宇宙」の代表理事薦田義勝さんである。

ADVERTISEMENT

 北別府さんと数十年の付き合いになる薦田さんは、なんとか早く元気になって頂きたいとの願いからこの「小惑星のプレゼント」を思いたったそうだ。薦田さんは言う。

「北別府さんは無骨なイメージですが、とても優しい方なんです。愛媛の子供たちのために立ち上げたスペース宇宙の理事もぜひ、と快く受けてくださいました。少しでも力になりたいと今回のプレゼントを思い立ち、中村先生に『北別府』の命名をお願いしたんです」

 この中村先生というのは上記の小惑星「カープ」の名付け親、中村彰正さん。元々カープファンだった中村さんは「カープ」以外にも、発見した小惑星に「津田」と名付けてもいる。現役時代北別府さんのファンでもあった中村さんは、このオファーを快諾。小惑星番号217726を「Kitabeppu」と命名したのだ。

 この小惑星「Kitabeppu」を発見したときのことを中村さんはこう語る。

「当時は勤務していた久万高原天体観測館で仕事を終えてから夜空を眺めていました。新星発見は一にも二にも努力。コツコツと調べるしか方法がありません」

 満月の時や、曇りの時は調査ができないという限られた条件下での観測。しかも夜中の12時からが新星発見のピークタイムである。年間60日ほどのチャンスを明け方まで費やし目にも過度の負担をかけ、その果てに新しい星を発見できるのだ。そんな過酷な環境の中でこの「Kitabeppu」が発見されたのである。そのストイックさは、現役時代相手バッターのクセを研究し、ミリ単位での投球術を極めた北別府さんのようでもある。