小口氏は大阪のオーディション会場にドラえもん柄のジャージ姿で現れた。憧れのアイドル事務所の社長である小口氏から契約書と誓約書を手渡され、小咲さんはその内容を疑うこともなく、言われるがままにサインした。
「何より合格したことが嬉しくて舞い上がっていました。しかも当時の私は芸能界についてあまりにも無知で、厳しすぎる禁止事項も、芸能界では当たり前なのだと思ってしまいました。今思えばもっと周囲に相談すればよかったです……」(小咲さん)
小咲さんがサインした“契約書”の内容はこうだ。
・契約期間は1年間ごとの自動更新で、契約を解除するには契約満了の120日前に申告が必要。
・SNSの書き込みや私生活は事務所が厳しく管理し、連絡が取れなくなる、遅刻、虚偽の発言があった場合はギャラの停止や減額、損害賠償の対象。
・ファン、メンズモデルや一般人であっても男性との交際は禁止。過去のプライベート画像が流出した際は本人だけでなく、(流出にかかわった)関係者も処罰、損害賠償の対象となる。
「ファンと連絡を取っただけで高額な金銭を請求するのはやりすぎ」
中でも小口氏が強調したのが、ファンとの距離だという。小咲さんが契約書と同時にサインした誓約書によると、SNSのダイレクトメールなどを含めてファンとプライベートで連絡を取ることは一切禁止されており、違反した場合には200万円以上の損害賠償が発生すると書かれている。未成年者の場合は保護者が負担するという“保証人”まで記載されている。
取材班が過去に入手した大手芸能事務所や人気アイドルグループの契約書と比べても、フリークの契約書・誓約書の厳しさは群を抜いている。たとえ表向きに「恋愛禁止」を売りにしてはいても契約書にはまず明記されておらず、罰金制度まで明記されているケースはほとんどない。
人気アイドルを多数抱える大手事務所の幹部も、契約書の内容に首を捻る。
「犯罪や勝手にAVに出演するなど、著しくグループの評判を落とす行為ならともかく、恋愛やファンと連絡を取っただけで高額な金銭を請求するのはやりすぎ。ウチは恋愛禁止を表向きうたっていますが、ファンとの繋がりが表に出てもせいぜい“休業”や“卒業”くらいで、タレントからお金を取るのはさすがにしませんね」