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「顔と体ばかりに気をとられていたが…」

 だが、そのなかにあって意外な魅力に気づいた人もいる。1997年に『週刊文春』のグラビア「原色美女図鑑」に初登場した際、エッセイを寄せた放送作家の小山薫堂は、彼女と実際に会って話をしてみた印象から、《顔と体ばかりに気を取られていたが、喋りが予想以上にいい。(中略)体力十分、食べ物の好き嫌いなし、一週間お風呂に入らなくても大丈夫、秘境が好きで歴史に詳しい……そんな話を聞くと、いつまでもビジュアル系じゃないでしょう!と思えてくる。/秋の改編で、女性司会者、あるいは女性キャスターにお困りのテレビ関係者のみなさんに、ボクは言いたい。/「思いきって藤原紀香を起用してみてはいかがですか」と》と書いた(※3)。

 この直後、97年10月より放送された木村拓哉主演の月9ドラマ『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)に出演したのを機に、大きな仕事も舞い込むようになる。翌98年10月より5年半放送された音楽バラエティ『FUN』(日本テレビ系)では松任谷正隆・今田耕司とMCを務め、小山薫堂が見抜いたように軽妙なトークで番組を盛り上げた。

映画『SPY_N』(2000年)

 そんな藤原には武勇伝も数多い。米・香港合作のアクション映画『SPY_N』(2000年)に主演したときには、地上172メートルの空中に吊られたガラス板の上での格闘シーンを、CGもスタントも使わず自ら体を張って演じた。このときはさすがにマネージャーから止められ、大げんかしたという(※2)。

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 また、ある主演ドラマの現場では、時間が押したためにある俳優が怒り出し、スタッフを殴る勢いだったので、藤原がすぐ前まで行って《殴るんだったら私を殴ってください》と制止し、《ごめんなさい。現場が押してイライラするのもわかります。でも、もう少し待ってください。みんな一生懸命頑張ってますから、お願いします》となだめたこともあったという(※4)。

「芸能界ではダメになっちゃうよ」という忠告も

 もともと子供のときから正義感が強く、曲がったことが許せない性格だった。幼いころには、デパートでぶつかってきた知らない男性が、謝りもせずに立ち去ろうとするので、追いかけて行って「悪いことをしたんだから、謝って」と説教したことがあったらしい。これにはさすがに親も心配したようだ(※5)。

©文藝春秋

 そうした正義感は、現在も力を注ぐボランティア活動や国際支援活動へとつながっているのだろう。直接のきっかけは2002年、戦火にあったアフガニスタンへ、自らの意志でテレビクルーをともなって取材したことだ。それ以来、世界各地の厳しい状況下で生きる子供たちを視察し続けるとともに、写真展やトークショーなどを国内外で開いて支援を呼びかけ、教育や保健衛生などの環境改善に寄与してきた。2010年にはNPO法人「Smile Please☆藤原紀香 世界こども基金」も設立している。

 ただ、本人に言わせると、こうした活動を始めたのは《正義感というより、(中略)多少なりとも影響力が持てる職業につけた私が社会に対して何かできないかと考えた》のが発端だった(※4)。しかし、女優が社会的な発言や活動をすることに、「こういうことやってると、芸能界ではダメになっちゃうよ」などと言ってくる人もいた。