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 藤原も最初こそ気にしていたが、紛争地域で活動する日本人の看護師などに、働く動機を訊ねたところ「99%自己満足かもしれない」「だけど、現地の言葉で『ありがとう』って言われて、その笑顔を見ると、役に立ってよかったって思うの」という答えが返ってきた。これを聞き、《これは自己満足なんじゃないか、なんて動機を問うている時間があったら役に立つことが大事なんだ》と、考えを改めたという(※4)。

藤原紀香を支えた、片岡愛之助の言葉

 俳優業や社会活動に加え、2016年に歌舞伎俳優の片岡愛之助と結婚してからは、夫の公演中ともなると、ご贔屓筋への挨拶や舞台裏でのサポートもこなす。じつは当初、歌舞伎俳優と結婚するなら仕事はやめなくてはいけないと思っていた。

©文藝春秋

 だが、女優をやめるべきなのかと、愛之助に訊くと驚いた顔をされ、《その必要はないよ。自分の世界を持つことは大切だし、仕事を続けている方もいらっしゃる。奥さんにやってほしいことは、ご贔屓筋に関すること。そこをしっかりしてくれれば大丈夫だし、これまで築き上げてきたキャリアと、ファンの皆さんを大切に考えてください》と話してくれたという(※6)。愛之助も、もともとは町工場の経営者の子として生まれ、部屋子として歌舞伎の世界に入った叩き上げである。それもあって、同じく下積みの長かった彼女のことをよく理解しているのかもしれない。

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 俳優としては近年、舞台、とくにコメディへの出演が目立つ。2017年には、三宅裕司率いる「熱海五郎一座」の公演『フルボディミステリー 消えた目撃者と悩ましい遺産』で東京喜劇に初挑戦した。また、2019年に東京・明治座などで上演された『サザエさん』では「10年後のサザエさん」に扮し、今年初めにも再演している。波平役の松平健からは《紀香ちゃんのサザエさんは、おっちょこちょいぶりもちゃんと表現しながら、ほんわかしたところもあって、とても似合っていました》と絶賛された(※7)。

「テレビのイメージとは全然違う」本来の性格

 本来の彼女は三枚目な性格で、《周りの友人たちは、テレビのイメージとは全然違うよね、といつも笑っていますね》という(※8)。お笑いも好きで、高校時代には落語研究会に所属し、校名にちなんだ「親和亭かつお」の高座名で、自作の小噺を披露したりもしていたようだ。

 今春にはブロードウェイのヒット作を関西弁のセリフに翻訳したブラックコメディ『毒薬と老嬢』で久本雅美とともに老け役に挑み、全国を回った。冒頭にあげた『恋なんて、本気でやってどうするの?』にしてもそうだが、50代となり、年齢を重ねた役が似合ってきた。そんな藤原は20年ほど前の著者で、一日一日を一生懸命生きるため自分なりの努力をしながら歳を重ね、個性を増していくことで、《心の年齢は若いまま、年齢不詳の魔女になりたい》と語っていた(※2)。そろそろその域に達しつつあるのかもしれない。

※1 『週刊現代』2021年12月25日・2022年1月1日合併号
※2 藤原紀香『藤原主義』(幻冬舎、2001年)
※3 『週刊文春』1997年7月30日号
※4 『週刊朝日』2008年10月31日号
※5 『婦人公論』2007年7月22日号
※6 『週刊新潮』2020年1月2・9日号
※7 『週刊朝日』2022年1月7・14日号
※8 『婦人公論』2017年4月25日号