自分が親からされて嫌だったことはしない、嬉しかったことをする
――英治さんは当時のことは覚えていますか。
英治 覚えているかな(笑)。今もですけど、「子育てをしてる」という意識はなくて、自分が母親や父親にされて嬉しかったことを、子どもにもしてるという感覚なんですよ。
夫婦喧嘩を見るのは嫌だなとか、「バカ」と頭を叩かれるのは嫌だなとか。嫌だったことはしないで、逆に小さい頃にしてもらって嬉しかったこと、例えば「あなたはいい子よ、いい子よ」って言われたこととか。そういうのは子どもにもしてあげていました。
――自分がされて嫌だったことはしない、されて嬉しかったことはすると、非常にシンプルですけど、お2人の愛情が詰まっているような子育て法です。
信子 私が小学生の時に、母が布団に湯たんぽを入れてくれたのがすごく嬉しかったんです。寒い日に湯たんぽがあると、ほわんと暖かくなって幸せな気持ちになって。だから子どもたちにもそれを経験させてあげたくて、小学生の頃に湯たんぽを入れてあげていました。
そしたら中学生の息子が「お母さん湯たんぽ入れて~」って甘えてきたので、「中学生なんだから自分で入れなさいよ~(笑)」って言ったら、夫が「お母さんが入れてくれるから嬉しいんだよね~」って。たしかに湯たんぽを入れてくれることも嬉しいんですけど、お母さんが入れてくれるってことが嬉しかったんだって、当時の自分の気持ちにも気づいて。それからは英治くんみたいに子どもの頃の自分の気持ちを思い出すようにしています。
4人目からは「完璧を目指さない子育て」へ
――たしかに子育て本も大切ですが、自分が経験したことを振り返ることは大切ですよね。
信子 そうですね。でも、完璧な子育ては目指していないです。上3人は年子だったので、最初の頃は、「しつけがなっていない」とか「部屋が汚い」と思われるのはいやで、完璧を目指していたんですけど、育児で完璧なんて絶対に無理だし、1人で全部やるのも限界があります。だけど、周りの人に頼ることも母親失格のような気がして、最初の頃は全部自分でこなしていました。
でもある時から「もう無理」って思い始めるんですよね。子どもが4人になったら、両手を繋いでおんぶしても足りないでしょ。そういう時に周りに助けを求めると、みんな嫌な顔ひとつせず喜んで引き受けてくれたんです。とてもありがたく、心強かったです。
頼ることはお母さん失格、のように感じていた私でしたが、違いました。頼ることで肩の力が抜けて、元気に前へ進めました。その後も友達に頼ったり頼られたりしながら、「おたがいさま!」と楽しく頑張れました。困った時にSOSを出すことは、お母さん失格なんかじゃなくて、私自身にとっても子どもたちにとってもすごく大切なことなんだと思います。
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