「良いことも悪いこともあった」と振り返る理由
加藤 活躍できるようになってからは、そういうのもうまく活かせていたかなと思います。少しずつメンタルに余裕が出てきていたので。
――現役時代を振り返ってみて、「美しすぎる女子野球選手」と呼ばれたことをどのように捉えているのでしょう。
加藤 私のことだけを考えれば、その肩書きは要らなかった。でも、いろいろな人に女子野球を知ってもらうためには、必要なことだったのかなと思います。個人的には、「良いことも悪いこともあったな」と両面から捉えていますね。
それに私がそうやって取り上げられることで、女の子が野球を始めるきっかけになったり、誰かの目標になったりしていたかもしれない。もしそうなっていたら嬉しいですね。
男女でプレー環境が少しずつ変わっていけばいいな
――スポーツ界では女性アスリートの容姿や体型ばかりが注目されてしまうこともあります。そういった傾向に対して、1人の経験者としてどのような部分に課題を感じますか。
加藤 女性アスリートのプレーを見てもらうためには、見せ方の工夫も必要なのかなと思います。女性の場合は体力面でどうしても男性に勝てない部分があるから、同じ競技をしていても少し迫力が劣ってしまう。でもだからといって、女子スポーツが面白くないわけでは絶対にないんです。
例えば野球だと、今は男性も女性も同じグラウンドでプレーしています。そうなると、女性の場合は男性よりホームランの頻度が減ってしまうんですよ、力の差があるので。でも、女子野球のときはフェンスを前にしてホームランを出やすくすれば、プレーが注目されやすくなりますし、迫力があって観客も盛り上がりますよね。
――環境面を変えれば、周りの見方も変えられる可能性がある、と。
加藤 もちろんルールや環境を変えるのは難しいことだと思っています。でも、すでに男女でコートの距離や大きさなどが違うスポーツもありますよね。個人的にはそういうのは良いことだと思っているので。ほかのスポーツも、少しずつ変わっていけば良いなと思います。
写真=末永裕樹/文藝春秋
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