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案内されなければまったく気づけないだろう絶景

「裏庭もご覧ください」と旅館の奥へとついていくと、部屋からは見えなかった庭が現れた。小さな池や美しい松など並ぶ中、サンダルを履き奥へ奥へと進むと、急に目の前が開けた。

裏庭から見える加茂湖

「え! 海ですか?」

「佐渡で一番大きな湖、加茂湖です。右に見えるのが佐渡で一番高い山、金北山です」

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日が落ちて表情が一変した加茂湖

 ここへ来るまではまったく見えなかった、海のように広い湖が目の前に広がり驚いた。山の向こうに日が落ち始め、静かに波の音をたてる湖がピンク色に染まっていく。こんな眺めの素晴らしいプライベートな湖畔が裏庭にあるなんて、案内されなければまったく気づかなかった。

 さらにご主人が、ニャーニャーと湖に呼びかけると、どこからともなくウミネコがやってきた。

旅館のご主人の声に呼び寄せられたウミネコ

「今年生まれたウミネコは羽の色がまだらで、まだニャーニャー鳴けずにピーピーって鳴くんですよ」

「もうそろそろ巣に帰らないと、暗くなると見えなくなって迷っちゃうからね」

 いつものようにビジネスホテルに泊まっていたら、絶対にこの景色を見ることはできなかった。

観光地も豊富な佐渡島

 佐渡島は“島”といっても、広さは東京23区より広い。バスもあるが、本数が少ないため移動はレンタカーが最適だ。

佐渡島最南端に位置する宿根木の古いまちなみ
佐渡名物たらい舟の遊覧

 次の日は朝からレンタカーを借り、目的の佐渡金山を見学。その後トキに出合い、名物のたらい舟に乗る。

日本の野生うまれ最後のトキ「キン」の剥製
佐渡金山では観光坑道でリアルな人形が坑夫の仕事ぶりを動きながら再現している

 古いまち並みを歩き、食事をすればなんでもうまい。特に佐渡の魚は格別だ。どんなに輸送手段が発達しても、とれたてに勝るものはないと実感。そして、佐渡は島特有の自然豊かで静かな風景と、島ということを忘れるほど賑わう都会的なまち並みが混在している。子供や学生も多く、近年は移住者も増えているというのも納得だ。

 2日目の朝、名残惜しくもう一度裏庭の加茂湖を見せてもらった。清々しい朝、思い切り息を吸う。後ろ髪を引かれる思いで、佐渡の景色を目に焼き付けた。

「船の時間は何時ですか。荷物重いでしょう。車で送りますよ」

 すぐ近くの港まで、ご主人が車で送ってくださった。

「毎年東京からいらっしゃるお客さんもいるんですよ。また佐渡へいらしてください」

 古い建物に興味のある方はぜひ金沢屋旅館を訪れていただきたい。自然の良さと人の良さが感じられる佐渡、必ず心に刻まれる旅となるだろう。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。