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「200円以上の大根は気持ち的に買えない」『きのう何食べた?』作者よしながふみと“リアル・シロさん”麻生要一郎が語り合う《家庭料理の愛おしさ》

『僕のいたわり飯』より#1

2022/07/11
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毎日なじみの個人店を1軒1軒まわって買い物

麻生 僕はその日、頭に浮かんだものを作って食べる感じだから、どうしても毎日買い物に行くことに。

よしなが ご著書(『僕の献立』)を拝見していると、お肉はお肉屋さん、魚は魚屋さん......と1軒1軒まわられるんですね。

麻生 はい。でも、そういう買い方をしていると、1日のうち、けっこうな時間が買い物にとられるんですよね。

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よしなが それでも、なじみになって買うというのは、楽しそうですよね。

麻生 個人店ならではの雰囲気があって、おもしろさはありますね。

『僕のいたわり飯』より

よしなが 私は、八百屋さんから派生したスーパーと、地区で有名なスーパーの2軒が近寄っていて、野菜に関してはお互いににらみ合っているので、値段を見てどちらかで。もう1軒、ちょっと離れたところに新しいスーパーができて、そこは魚が美味しいので、最後に行って魚を買います。だから、3軒に寄っていますね。

麻生 かなり大量になるのでは?

よしなが ハアハア言いながら帰ってきますよ。冷蔵庫に入れる前に、長い野菜を切ったり、あさりの砂抜きをしたり、最低限のことだけします。

家庭料理の楽しみ「お刺身は今日食べないと」

麻生 僕みたいに毎日だと、そのつど手間がかかって意外と大変です。冷蔵庫の中身が増える一方で、あ、昨日食べそこねたあの食材がある、いただきものがある、と気づいて、思いがけない献立になったりして。食卓にグラタンとお刺身が並んだり。でも、それはそれで家庭の味わいだと思っています。

よしなが 楽しいですよね。お刺身は緊急性があるから、なんとしてもその日のうちに食べておきたいですもんね。

麻生 まさに。グラタンを作っちゃったけど、お刺身は今日食べないと、という流れでそうなりました。

『僕のいたわり飯』より

よしなが 史朗がひとりで食べるときも、ナポリタンと切り干し大根という脈絡のない献立の日があります。ひとりごはんは、残りものを片づけるのが先決なので、人には絶対に出せないけど自分ならいいや、で、そうなったんだと思います。

麻生 家庭料理ならではですね。

よしなが グラタンとお刺身も、ナポリタンと切り干し大根も、ある種のぜいたくですよね。料理屋さんで食べることは決してできない組み合わせ。

『きのう何食べた?』より ©よしながふみ/講談社

麻生 暮らしの知恵からできた献立ですね。よしながさんはふだん、主菜はお肉か魚、どちらが多いですか?

よしなが 漫画にも描きましたが、健康のためもあって、せめて週2~3回は魚を食べたいと思っています。だから、魚だけは高くても必ず買いますね。

麻生 わが家もパートナーが青森出身なので、魚が多いです。

よしなが 素敵ですね。私は青魚が好きで、特にさんまが好きなんですが、今や高級魚なので......。

麻生 いわしもさんまも、すっかり高級魚になりましたよね。(#2に続く)

僕のいたわり飯

麻生 要一郎

光文社

2022年1月18日 発売

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

「200円以上の大根は気持ち的に買えない」『きのう何食べた?』作者よしながふみと“リアル・シロさん”麻生要一郎が語り合う《家庭料理の愛おしさ》

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