コロナ禍で注目を浴びた「おうち時間」。毎日の食事も自宅で取るようになった人も多いのではないでしょうか。

 昨今では、同棲する筧史朗(シロさん)と矢吹賢二(ケンジ)の食卓を通じた日常が描かれた、よしながふみさんの人気漫画『きのう何食べた?』がドラマ化、映画化もされました。弁護士であるシロさんが、美容師として働くケンジの帰宅を待ちながら作るのは、バランスのとれたおかずに炊き込みご飯とお味噌汁。

「僕は一応、役割的にはシロさんで、僕のパートナーがケンジさんということになりますかねえ(笑)」

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 そう話すのは料理研究家の麻生要一郎さんです。

料理研究家・麻生要一郎さん

 麻生さんは、家庭的な味わいがつまったお弁当をケータリングサービスで届けていますが、素朴ながらも誰もが親しみを感じるそのお弁当は、雑誌の撮影現場やコンサート会場からも大好評だとか。

 そんな麻生さんのInstagramには「本日もお疲れ様でした!」という言葉とともに、パートナーと一緒に食卓を囲む写真が溢れています。麻生家の日常の食卓から、どこか懐かしく、簡単にできる料理を紹介しているのが、今年1月に上梓されたレシピ本『僕のいたわり飯』(光文社)。

 本書の中では、「家庭料理」に共通点をもつ麻生要一郎さんと漫画家・よしながふみさんが対談をしています。ふたりが語る「いたわり飯」の魅力とは――。(全2回の2回目/#1を読む)

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よしながさんの「母の料理」

麻生 シロさんはお母さんの影響を受けていますよね。僕も亡くなった母の影響は少なからず受けていますが、よしながさんはいかがですか?

よしなが どうだろう?  母も料理好きではありますが。麻生さんがご著書でお書きになっているように、うちの母も洋食が好きでした。両親が共働きだったので、中学生くらいから自分で夕飯を作っていましたけど、私は和食が好きなんですよ。それで、高校生のときだったかな、さんまと栗ごはんと茶碗蒸し、というような献立を出して意気揚々としていたら、「なんだ、この養老院みたいな食事?」って。

麻生 (笑)。

よしなが たぶん、お肉がごちそうだった世代なんです。2日続けて魚を出すと、イヤな顔をしていました。とにかくラザニアが好きで、人が家に来るときは母みずから作っていましたが、ふだんは私もよく作りました。ラザニアを作って待っていると、ものすごくご機嫌なので。

『僕のいたわり飯』より

麻生 うちの母もパン派で、みそ汁には全然興味がなかったです。ある日、母と買い物に行って、切り干し大根を車に積もうとしたら、「それ載せるの? だったら、しっかり袋に包んで」と言われたことがありました。

よしなが 乾物のにおいってこと?

麻生 はい、袋に入っていてもにおいが漏れるからと言われて。こんなもの買ってすみません、みたいな気持ちになりながら、トランクへ(笑)。