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コストカットは“温泉”にも…

「会社は雇調金を少しでも多く受け取るため、今度はなるべく多くの社員に休業を割り当てて出社人数を制限したのです。例えば清掃は1部屋を複数人で30分かけていたが、1人で15分以内となった。チェックインまで休憩は無く、消毒作業をしたら間に合わないので、消毒液を清掃作業には持ち込まず、消毒は省いています」

 名宿のコストカットは、旅館の生命線である温泉にも及んだ。

「人件費を抑えようと出勤人数を減らしているので、現場はいつも人手不足。温泉では感染症を防ぐために温泉法に基づいて塩素濃度を0.4~1.0mg/L未満に保つ必要がありますが、よろづやでは適切な塩素管理をする人員を配置していないため、0mg/Lとなっていることが多い。今年1月、保健所の指導を受けても改善されませんでした」(B氏)

従業員の測定では温泉の塩素濃度は0に近い

 そうして積み上げた不正受給額は、相当な額にのぼるという。

「幹部の“休業出勤”による不正受給だけでも3000万円は下らない。それ以外にも一般社員による“休業出勤”やパート・アルバイトへの休業手当未払い分もある。不正が認定された場合の返還額には不正以降の支給額全額に、不正受給額の2割に相当する違約金も加わります。また、他の助成金も5年間は取得できない」(同社社員のC氏)

 告発者は労働局の担当者にこう念を押されたという。

「返還額は億単位にのぼるとみられ、会社が潰れかねないが、覚悟はありますか」

 今回、従業員たちが告発を決意した背景には、社長への根深い不信感があった。

萬谷社長(同社HPより)

「有給休暇は長年取得できない状況が続き、残業代の未払いも横行していた。昨年、数回にわたり労働基準監督署が是正を求め、やっと5日の法定有給が確保されました。ただその後も社長は、5日を超える有給は『安易に与えるな』と発言し、有給の承認は社長の決裁を経るよう幹部に指示していました。労働契約書に記載されているはずの賞与も、私が知る限り支給されたことは一度もない。毎年15人程採用する新入社員も、3年後には5名程しか残りません。他にも、調理場でセクハラ被害に遭った社員が民事訴訟を検討しているなど、従業員を塵芥のようにしか考えていない社長に対する不満は頂点に達しているのです」(前出のA氏)

 こうした証言や証拠に基づいて「週刊文春」が萬谷社長を直撃したのは6月12日のことだった。