他人に罪をなすりつけているうちに…
法廷での金田は、誰かが止めない限り話し続け、話しているうちに、どんどん筋が通らなくなっていったという。
「捜査段階では同居の男が殺したと主張し、次には自分に好意を持っていたある男が、被害者を殺害したと主張する。なぜ殺す必要があったのかと裁判官に問われ、『その男は自分と結婚したがっていたから、被害者が邪魔になって殺した』と答える。ところが、その男は当時、病気で入院していたことがわかっていたので、それを伝えると、それきり黙り込んだ」(同前)
別の公判では、「私が同居の男と娘と一緒にいたいから、殺したと同居の男がそう言ったが、あれは嘘だ。被害者のほうが、全ての面で同居の男より優れていた。被害者を殺して同居の男と一緒に生活したいなどと、私が考えるはずがない」と、金田は主張して泣いたという。
ところが次の公判では、同居の男が被害者をこうやって殺しているのを見たと、唐突に言い出した。
「金田は『私がある夜、被害者の家に行ったら、玄関にカギがかかっていて入れなかった。それで台所に回り、台所の窓から見たら、男が被害者の後ろからロープで首を絞め、頭を殴って殺していた』と、具体的な犯行方法をしゃべり始めた」(同前)
この発言には捜査員だけでなく、検察官や裁判官も驚かされたとC氏は明かす。
「何が驚いたって、この発言が状況と一致するなら、男が殺していないことを証明すればいい訳だ。男には動機がない。道具の購入もしていない。みんな金田が一人でやったことだ。コンクリートから出てきたのも彼女の毛髪だけ。とすれば、犯人は金田以外いないことになる」
被害者の喉仏が折れていたことから、ロープを使って背後から首を絞めたことは間違いなかった。金田が説明した殺害方法は、部屋のあちこちに残されていた血痕や状況証拠と合致。これは検察、警察にとって半ば自供にも等しい発言だった。
供述を次々と変えるうち混乱し、自分にとって何が有利で、何が不利かを判断する能力が失われたのだろうとC氏は推測する。「とにかく他人に罪をなすりつけようと必死だった」という金田に、東京地裁は2008年6月、懲役25年の刑を言い渡した。殺害の計画性は否定したが、死体遺棄と損壊で有罪とした上で殺害犯であると認定した。