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「日本語吹替版がもっとも素晴らしかった」と…トム・クルーズを演じ続けた森川智之が叶えた“念願の対面”

『声優 声の職人』より#1

2022/07/17
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 そのときにトムの吹替えの話になって、謙さんが「トムに会った?」と聞くんです。会ったことがないと言うと、「森川さんは絶対に会ったほうがいい。トムも日本で吹替えをやっている人に絶対会いたいと思うから」って言われたんです。それがすごく印象的だったので、その言葉を鵜呑みにして会えるといいなとずっと思っていましたが、すぐに連絡を取れる相手ではありませんからチャンスを待っていたんです。

 ちょうどその頃に、テレビ番組の収録で映画字幕翻訳家の戸田奈津子さんと対談する機会があって、僕の中で、つながってきたという感じがしてきました。戸田さんはいつもトムと一緒で、お歳暮ももらう仲。その戸田さんと意気投合したんです。

戸田奈津子さん ©文藝春秋

 それで仲良くなったときに「あなた、トムに会った?」と言われたんです。会ったことがないと答えると、彼女もやっぱり「会わないとダメ」と。だったら「会わせてくださいよ」と言うと、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のジャパンプレミアのときに紹介してもらうことになったんです。

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 ただジャパンプレミア当日、戸田さんはこの話を覚えていませんでしたけどね(笑)。それでも控え室で、戸田さんを交えてトムと会うことができたのは本当に幸せな出来事でした。

 ちなみに吹替えの担当がレッドカーペットを歩くこと自体、タレントを除いた本業の声優では、それまでなかったんじゃないかなと思います。それ以降は、ご招待をいただいていて、スケジュールが合えば必ずレッドカーペットを歩かせてもらっています。声優として、こういった多くの方たちが注目する場で、声優・吹替え文化を伝えていきたいという思いもあります。

声優 声の職人 (岩波新書)

森川 智之

岩波書店

2018年4月21日 発売

「日本語吹替版がもっとも素晴らしかった」と…トム・クルーズを演じ続けた森川智之が叶えた“念願の対面”

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