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そして藤田元治、小山正明両エースの先発で始まった天覧試合は、先制点を許した巨人が長嶋のホームランなどで逆転するも、阪神に再逆転を許すなど一進一退の攻防がつづく。7回にルーキーの王貞治の2ランで追いつき、4対4で九回裏を迎える。
マウンドには打倒巨人に燃える村山実。先頭打者として打席に立ったのが長嶋だ。
カウント2ボール2ストライクからの5球目。快音と同時に4万5千人と満員に膨れ上がったスタンドの歓声が、球場を包み込んだ。左翼ポール側へと伸びていった打球が、スタンド上段に吸い込まれるのを見届け、長嶋はゆっくりと一塁ベースに向かって走り出した。
貴賓室を見上げると…
「3塁を回ってホームに向かう時、貴賓室を見上げると陛下は拍手をしながら身を乗り出しておられた。皇后さまも半分立ち上がった姿が見えました。『野球をやっていてよかった』と、その瞬間に思ったことを覚えています」
7月8日発売の「文藝春秋」8月号では、長嶋氏の回想をもとにした記事を8ページにわたって掲載する。ここで長嶋氏は、サヨナラホームランの感触や前夜のイメージトレーニング、ライバル村山実投手との友情などについて明かしている。
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