ーーAV女優がインフルエンサーとなり、偏見めいたものが薄れてきているように思えるなかで、現在の女優さんたちが悩んでいるのはどういった部分でしょう?
小室 これは私が聞いている限りですけど、「困ったことがないことに困っている」感じがします。AV女優という仕事を続けようと思えば、どこまでも続けられる環境下にある。
そこまでは売り上げはないかもしれないけど、結婚していることや子供がいることを誰にも知られずに、月1本のペースで出て、ギャラを10万か20万もらえるのならば「良くない?」っていう、そういう方もいらっしゃるし。
“辞め時”がないことが、悩み。「このままじゃ……」というのは漠然とわかってるけど、現在の環境を変えるのにどこか戸惑いがある。重い腰が上がらないという感じを、私は受けています。
ーー次が見えないといった部分に関しては、今も昔も変わらない。
小室 そうですね、でもその質は違う気がします。昔の子たちの“次が見えない”は、リスクのほうが強くて踏み出せない。今の子たちは、あれもできるこれもできる、チョイスがいっぱいあることで次が見えない。べつに切羽詰まってもいないので、情報を取りに行く必要がないっていう。
元AV女優目線で評価できる、AV新法の「文言」
ーー労働環境の面においても「べつに切羽詰まってもない」のでしょうか。たとえば、2016年にAV出演強要問題が明るみに出ましたが、それ以来減っているのかなと思うんですけれども。
小室 AV出演強要問題を受け、業界内でいわゆる「適正AV」「適正プロダクション」という枠組みを作る動きなどもあったので、減っているとは思います。先日もAV新法が成立しましたが、労働環境は改善される方向に進むんじゃないでしょうか。
今回のAV新法のことに関しても、いろいろな意見がありますけど、私が評価しているのは「出演者に対して性行為を強制してはならない」、つまり「出演者がやりたくなかったらやらなくていい」という文言が入ったこと。やりたくなかったらやらなくていいといった選択肢が女優側に与えられたというのは、非常に大きいなって。
ーー契約の解除をめぐる権利もかなり手厚く保護されているようですが、昔は「出る」と言ったら絶対に出なくてはいけない雰囲気だったのですか。
小室 取り消せないくらいの勢いはあったと思います。「やっぱり出たくない」と言っても誰も味方になってくれないし、親が出てきて、やっと事務所が話を聞いてくれる。でも親に言うまでが、すごくハードル高いし。 本当に出たくなかったら全力で逃げるしかなかったんじゃないかな。
近年そうしたケースは減ってきているとはいえ、そのような被害を受けた人たちの救済に重きを置いた法律なんじゃないかと。なかには、「余計なことしやがって」と思ってらっしゃる人もいるでしょうけど。