自然体のお芝居の秘密⁉
酒井 俳優さんだからといって、人前で何かをすることが得意な人ばかりではないわけですね。となると、演じることにつきまとうと思われる恥ずかしさを、どうやって克服されてきたんですか?
小林 いや、今も克服できてないです(笑)。20代の頃は、まわりを見渡すと綺麗な方ばかりだし、かたや自分は見た目も愛想もよくないし、どうも私、場違いな世界にいるなあ、ってずっと思ってました。それが、「あれ、意外とそんなにみんな人のこと気にしてないかも」って気づき始めたのが30代過ぎて。最近はもう「誰も人のことなんて気にしてないから大丈夫!」という心境に至りました。
酒井 加齢による羞恥心の克服……わかる気がします(笑)。
小林 酒井さんは、この本(『無恥の恥』)の中で不特定多数に向けて書いているのはまったく恥ずかしくないけれど、知り合いが自分の本を読んでいると思うとすごく恥ずかしいって書いていらっしゃいましたよね。私も実際にお客さんが目の前にいるのは恥ずかしいです……。お願いだから、帰ってください、って思っちゃう(笑)。
酒井 自分の内面をさらけ出すからこそ、相手の顔が見えるのが恥ずかしい。その辺りは演じることと書くことは似ているのかもしれないですね。
小林 それから「すべてのエッセイは自慢である」というのも、確かに! まさにその通り! と思わず笑ってしまいました。「私ってこういう人間なんです」なんてよそ様にはまったく余計なお世話ですよね(笑)。
酒井 書くことも、演じることも自意識と切り離せませんが、小林さんのお芝居は、そういう自意識を感じさせず、自然体なところが素敵です。
小林 それは自然体というのではなく、ボロが出ないようになるべく何もしないでいるのを自然体だと思われているのではと最近思うようになりました(笑)。
酒井 そんな……まさかのお答え(笑)。でも、小林さんのお芝居がいつも新鮮なのは、ご自身を客観視する感覚と「恥ずかしい」という気持ちを持ち続けているからなのかな、と思います。小林さんはエッセイの名手でもありますが、エッセイでも自然に書かれているのですか?
小林 いや、むしろエッセイは、自分の中のやさぐれた部分を奮い立たせて書き殴っている感じです。やさぐれないとできません(笑)。もっといえば、インタビューっていうのも気恥ずかしいです。「素敵なこの人」を紹介する場だから、キラキラしたものを求められるし、「最近はこんなことにこだわってます」みたいな、読者が素敵だと思うようなことを言わなくてはいけない雰囲気があって。「どうしよう、何もないな」なんて思いつつ、多少それっぽいことを言っちゃって、それがまた恥ずかしい(笑)。