全市民約46万人の個人情報が入ったUSBメモリーが紛失し、騒動となった尼崎市。7月7日、稲村和美市長(49)が、今年11月の市長選に立候補せず退任することが、神戸新聞の報道で明らかになった。現在3期目の稲村市長は、昨年末頃から今期限りを周囲に相談していたという。

 この事件では、紛失した40代男性担当者について、市が作業を委託した大手情報システム企業からさらに再委託された企業が、さらに再々委託していた“ひ孫請け”企業の社員だったことが判明。尼崎市は「把握していない」と”激怒”し、損害賠償請求を検討する姿勢を見せていた。本当に市はこの事実を認識していなかったのか? 業者側が、委託の舞台裏を証言した「週刊文春」スクープ速報を再公開する。(初出:文春オンライン 2022年7月5日掲載 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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 6月21日、兵庫県尼崎市で全市民約46万人の個人情報が入ったUSBメモリーが一時“所在不明”になった問題。USBを紛失した40代男性Aさんは、市が作業を委託した大手情報システム企業「BIPROGY(旧・日本ユニシス)」が再委託した企業「アイフロント」が再々委託した“ひ孫請け”企業の社員だった。これに対し、尼崎市は「(BIPROGYが)再委託、再々委託に出していたことは把握していない」と“激怒”。稲村和美市長が「契約違反があった。様々な観点から損害賠償請求を検討する」と発言する事態に発展した。

稲村和美・尼崎市長は2010年に当時最年少の38歳で市長に ©︎共同通信

 そんな中、BIPROGYの在阪会社関係者X氏が「週刊文春」の取材に応じ、「『再委託されていることは知らなかった』という尼崎市の説明はウソです」と証言した。

“USB紛失”当日に何があったのか。

©iStock

「BIPROGYの社員ら4名が午後5時から作業を行いました。尼崎市役所近くの市政情報センターでデータを抜き取ってUSBに格納。BIPROGYのコールセンターに持って行った」(全国紙記者)

 作業が終わった4人は「“打ち上げ”も兼ねた慰労の会」(前出・X氏)で大阪府吹田市内の居酒屋へ繰り出した。飲み会は3時間ほどで終了。だが、USBを所持していたAさんは泥酔してしまっていた。店を出て「お疲れ様です!」と解散した3人だったが、Aさんはそのまま路上で寝込んでしまう。翌朝、USBが入ったかばんをなくしたことに気づき、会社や警察も含む大人数で捜索が続けられた結果、USBは3日後の6月24日に発見。データ流出は今のところ確認されていない。ただ、Aさんは責任を感じて憔悴しきっているという。