連想したのは『ダンケルク』だった
この交代というモチーフは、他にも見られる。重傷を負ったレイアの代わりに指揮官に就任するホルド提督。交代ではないが、エースパイロットのポー・ダメロン中佐は、指揮官(レイア)の命令に背いたことで、降格させられる。そして何よりも、物語の中心には、ルークからレイへの継承というモチーフが据えられている。
これは「革命」ではない。物語が革命を描かなかったように、テーマや表現にも革新はない。それは本作がSWという永遠に続く王国の一部だから当然なのだ。そして、ルーカスという作家ではなく、ディズニーという会社がSWというフランチャイズをつくる結果でもある。
シリーズ史上最長の152分という長尺で、ファースト・オーダーに追われるレジスタンスがひたすら逃げる状況が語られる。その間に、ルークとレイの継承と交代のエピソードと、カイロ・レンとスノークの抗争、レンとレイのフォースによるコミュニケーション、さらにフィンとローズの潜入劇が交互に語られる。
連想したのは、クリストファー・ノーランの『ダンケルク』だった。戦争という大きな物語の一部(逃走劇)にフォーカスして描いているという点が似ている。この戦争はどうして起きたのか、戦いの行方は世界をどう変化させるのか、という視点を排除しているところも、『ダンケルク』に近い。戦争ではなく、戦闘を描くことで、ストーリーを語るというよりも、シチュエーションやキャラクターを効果的に見せていく。これはTVシリーズでのキャラクターの描き方に近い。物語を進めていくのではなく、キャラクターを深掘りする方法だ。前作から受け継いだレイ、フィン、ポー、カイロ・レンたち新キャラクターをさらに深く、魅力的に見せることに注力している。しかし、フィンとローズの敵地潜入のエピソードや、レイとルークの深まらない交流と継承などが徹底されていないのは残念だ。
もちろん、カイロ・レンとスノークの騎士団との剣戟シーンや(ライトセーバーの逆手持ち!)、最後の塩の惑星での決戦など(真っ白な世界に、あたかも盛大に血しぶきが舞うように見える戦闘シーン!)、印象的なシーンはいくつもある。
SWという永遠に続く王国で、新しい物語を始めるためには、枠組みを破壊する革命ではなく、そこで活躍するキャラクターを描き、枠内を埋めるべきである、という賢明な判断があったのだろう。