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2017/12/31

genre : エンタメ, 映画

わたしが最初に『SW』に遭遇したのは、浜村淳氏のラジオだった

 では、ルーカスの起こした1977年の「革命」のことを振り返ってみよう。

 わたしが最初に『SW』に遭遇したのは、浜村淳氏のラジオだった。観る前にあの語りで、いきなり詳細を知ることになったのだ。その後、映画雑誌「ロードショー」に掲載されていた1枚のスチール写真を目にする。C-3POの横で、双眼鏡をのぞいているルーク・スカイウォーカーの姿は、それだけで『SW』の新しさを伝えてくれた。
日本で公開されたのは、アメリカから遅れること1年以上(日本では『未知との遭遇』の方が先に公開された)。当時はインターネットなどないので、海を超えてくる情報量や速度は今とは比べるべくもないが、それでも『SW』の評判は、日々届いていた。凄いSF映画が大ヒットして、世界中でSFブームが起こっている。そんな海外での熱狂を受けて、『SW』の日本公開前に、東宝の『惑星大戦争』、東映の『宇宙からのメッセージ』など、急ごしらえの和製SWが公開されたりもした。

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 わたしも『SW』を目にすることを楽しみにしている少年の一人だったが、それがSF映画と呼ばれることに、どこか違和感を抱いていたのも確かだった。当時のわたしにとってのSFとは、現実の世界や社会が抱えている問題や矛盾を、別の視点やシチュエーションを導入することで浮き彫りにし、批判するものを意味していた。『2001年宇宙の旅』『猿の惑星』『ソイレント・グリーン』『赤ちゃんよ永遠に』『1984』『ゴジラ』など、社会批評や哲学的な視点があるものがSFだった。『SW』について、当時の世論にも、荒唐無稽、子供騙し、思想がない、などという批判的なものが散見されたのも事実だ。

 果たして、公開された『SW』は、SFではなかった。SFではなく、宇宙を舞台にした「おとぎ話」だった。かといって、批判されていたような底が浅い子供向けの宇宙チャンバラ映画でもなかった。それは、それまでの映画を変えてしまう、革命的な映画だった。まさに「スター・ウォーズ」というムーブメントとカルチャーを新たに創出した作品だったのだ。

神話論と普遍的なテーマとスペースオペラ

 ルーカスが『SW』の世界を創作するにあたって、神話学者のジョーゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』などの神話論をベースにしたことはよく知られているが、『SW』で展開されていたのは、親子の関係や、青年の成長などの普遍的な問題(テーマ)だった。

 さらにフォースやジェダイという東洋的な思考の影響をうかがわせる概念によって、西欧的ではない、むしろ古典的な、宗教的、哲学的な要素をSF(スペースオペラ、といった方がいいかもしれないが)に持ち込んだ。そのひとつが、フォースには、ただの善悪ではない、物事の二面性が潜んでいる、という考え方だ(そこには若き日のルーカスが黒澤明作品などに傾倒した影響もあるだろう)。