*本稿には『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のネタバレが含まれています。未見の方は、ご注意ください。
スター「ウォーズ」という作品をつくるとは、どういうことか?
戦争と革命の時代は終わった。圧倒的な軍事力によって他国を支配し、人民を虐げる帝国と抵抗勢力との戦いや、体制を打倒する革命の時代は終わった。
そんなふうに言われる時代にスター「ウォーズ」という作品をつくるとは、どういうことなのだろうか?
ジョージ・ルーカスが最初につくった1977年の『スター・ウォーズ』(以下『SW』)は、20世紀的な世界大戦を連想させる、ふたつの勢力(帝国軍対共和国軍)の戦争と革命を描いていた。
シリーズ最新作の『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(以下『最後のジェダイ』)では、前作エピソード7に引き続き、帝国崩壊後に勃興した軍事勢力ファースト・オーダーと、それに対抗するレジスタンスとの戦いが描かれる。一見すると、エピソード4から始まる旧3部作の帝国対共和国の構図そのままだが、そこには大きな違いがあるように思える。
これは革命ではなく、政権交代であるように思える
ルーカスが1977年に産んだ『SW』は、戦争と革命を描き、映画表現やビジネスにも革命を起こした。
『最後のジェダイ』では、「戦争」は描かれないし、革命も起きていない。革命とは、支配されているものが支配するものを倒すこと、古い国やものを壊し、新しい体制やものをつくることだ。『最後のジェダイ』は、物語、表現(技術やデザインも含めて)、ビジネスの面で、これまでのSWという枠を壊していない。
しかし、それは本作の真価を損なうものではなく、むしろ、21世紀の現在につくられるべくして誕生した真っ当なSWシリーズの新作であることの証明なのだ。
物語のベースは、ファースト・オーダーの艦隊の奇襲を受けたレジスタンス勢力が、別の惑星にある基地に逃げる、というものだ。これは、大きな対立(戦争状態)の中の戦闘を描いたものだ。
終盤近くで、カイロ・レンは、ファースト・オーダーの最高指導者スノークを殺害する。これはいわば、レンによるクーデターであり、一種の体制内革命となるはずだが、本作はそのようには描かない。カイロ・レンはレイに、一緒に新しい秩序をつくろうと呼びかけるが、結局そんな行動は見せない。ファースト・オーダーという組織を破壊するのではなく、空席になった最高指導者の椅子にカイロ・レンが座っただけだ。組織のトップが交代し、その権力や目的が、そのまま新しい指導者に継承されただけに見える。今後のことは次のエピソードで描かれるのかもしれないが、少なくとも現時点では、これは革命ではなく、政権交代であるように思える。