──東京23区に住みながら月給15万というのは、独身でも生活できるかどうかという本当にギリギリのレベルです。
柳田 ネガティブに考えれば、とてもじゃないけど結婚できる経済状況ではありませんでした。妻がアルバイトをして15万ほど稼いでいましたが、それでも手取りは合わせて21万です。
でも、僕はなんでもポジティブに考えるタイプで、2人で力を合わせればなんとかなると思っていたんですよね。子どものこともお金がないなりに最初から考えていて、運良く授かることができたら2人でしっかり育てていこうと話し合っていました。
引っ越しで全財産ゼロだけど、3人目を妊娠
──とはいえ、共働きでそれだけ子どもがいると、柳田さんも奥さんも子育てが相当大変だったんじゃないかと思います。
柳田 僕は当時、飲食店で主に夜に働いていました。だから夕方に保育園まで子どもたちを迎えに行くのと、買い物と夕食の支度をするまでが僕の役割。朝は妻の担当です。共働きのうえに生活パターンが逆だったんです。
そうすると、僕が夜中に家に帰ると子どもたちが起きちゃって騒ぎ始めるんですね。それで育児ノイローゼ気味の妻がヒステリックになり、僕もつい声を荒げて……。当時は大変でした。3人目の次男が生まれるころが一番ヤバかったかもしれません。
──どういうところが一番ヤバかったんですか。
柳田 やっぱりお金がなかったことですね。結婚当初は1Kの安いアパートに住んでいました。でも、長男が生まれて2DKに引っ越し、2年後に長女が生まれてそこも手狭になり、もう少し広い2LDKに引っ越したんです。有り金を全部はたいて。
そうしたら3人目の次男ができて……。念願の3人目だからうれしかったんですが、当時の僕たちの収入では子どもが3人になると生活できない。しかも、引っ越し費用でお金を使い切ってしまったのに、今度は出産費用が必要になった。
──出産育児費用は各自治体から一時金が支給されます。
柳田 もちろん一時金は活用しました。ただ、自治体から口座に振り込まれるまでタイムラグがあり、その間は自分で立て替えなければいけないんですよ。でも、僕らにはその立て替えるお金もなかった。それくらいギリギリの生活だったんです。
どうしようかと悩んだあげく、仲間にお金を借りました。本当に情けなくてみじめな気持ちになりましたね。そのとき、僕のなかでスイッチが入ったんです。家族のために稼がなきゃいけないと。それまでの僕は子どもがいるのに甘ったれでした。