「トラブルは起きるもの」と思うべき
親が高齢になると遺言書の作成も苦労する。
東京・世田谷区に住む50代後半の男性サラリーマンは、母親が亡くなったのを機に80代の父親に遺言書を書いてもらった。
男性には弟がいて、それぞれ父親所有の土地に家を建てて住んでいる。遺言書は、土地はそれぞれが相続することと、預貯金については今後金額が変わる可能性があるため「その他財産」として半々で相続するという内容にした。
兄弟の間では以前から合意できていた内容だが、それぞれの妻が口を出してくる可能性がある。将来、父親が兄弟どちらかの家で同居すれば、同居したほうは特例を利用して相続税を大幅に下げられる。それも争いの原因になると考え、父親に遺言書を書いてもらった。
「父親は高齢で文字を書くこともなくなっていたため、1行書くのに30分も40分もかかりました。書き間違えばかりするので、鉛筆でもいいと聞いて、専用のゴムでこすれば消せるボールペンを使ってもらいました」(男性)
作成後、地元の司法書士に見せて間違いがないか確認してもらった。遺言書は法務局へ預けるつもりだ。
「預かってもらうためには、父親の写真入り身分証が必要だと知りました。父親は免許を10年以上前に返上し、パスポートは更新していないため、顔写真が入っているのはマイナンバーカードしかありません。以前申請したのですが面倒くさがって取りに行っていませんでした。今、再申請しているところです」(男性)
親子、兄弟姉妹、親族。今は関係が良く、将来、相続争いが起きることを想像できない人は多いかもしれない。しかし現在の関係がどれだけ良好でも、相続の時に揉めることは珍しくない。しかも、相続は故人と相続人だけではなく、相続人の配偶者など周囲も関わってくる。理屈では説明できない感情の動きが影響するため、やっかいだ。相続争い、またはトラブルは起きるものだと考え、事前にできることは、できるだけ早く着手することが必要だ。