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《私は蝶が何をしゃべっているかわかった》作家・夢枕獏も驚いた“俳句の先生”夏井いつきの「ゾーン」

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『プレバト!!』を観て「おっかねえなぁ」と

 夢枕 5年半くらい前かな、夏井さんが選者を務める『NHK俳句』にゲストで呼んでいただきました。『プレバト!!』(MBS)で辛口採点する夏井さんを観ていましたから、「おっかねえなぁ」と。いっぱい怒られたらどうしよう、なんて思いながら俳句を作りました。そしたら、ないんですよ、直しが。一個も!

 夏井 そうだった、そうだった。修正なしは番組初でしたよ。

 夢枕 ふふ。

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夢枕獏さん

 夏井 もともと息子が獏さんの大ファンだったみたいで。

 夢枕 俳人の家藤正人さんですね。

 夏井 そうです。獏さんがゲストと知った正人がすごい勢いでやってきて、「僕がファンだってこと、知ってるよね!? 一生言うこと聞くからサインをもらってきて」と言うんですよ。私は『陰陽師』のイメージが強いから、それよりも「収録中に急に祈り出したらやだな」と思ったりして(笑)。

 夢枕 ハハハ。

春の季語・ワカサギ釣りに「連れてって!」

 夏井 でも会ってみたら、控え室でもうすでにめちゃくちゃ愉快なおじさんだった。その日は帰るまでずっと楽しかったな。収録後、「これから釣りに行く」っておっしゃっていましたね。

 夢枕 そうそう。それで、毎年冬に網走でワカサギを釣るって話したら、「行きたいっ!」って。

 夏井 俳人からしたら、ワカサギなんてネタの宝庫だから……。春の季語ですけど、直に接してみたいと思って。分厚い氷の張ったところに行って穴を開けて釣り糸を垂らすなんて、なかなか自分たちだけではできないじゃないですか。そうしたら目の前の気のいいおじさんが「今度行く」と言うから、これはもう、食らいつくぞと「連れてってください!」とお願いしました。

 夢枕 そのときから夏井さん、「いつにしましょう?」って(笑)。

 夏井 そうだったかも。で、俳人の夫と息子も一緒に行くことになったんですけど、そんな寒いところへ行ったことないから着る服もなくて、獏さんにモンベルに連れて行ってもらったんですよね。