俳句なんて、俺の柄じゃないんだよ。そう思ってたけど、近頃ようやく気持ちに変化が生まれた。
俳句って、けっこう面白そうじゃん。コーヒーを飲みながら『プレバト!!』を見ていると、いつしか心地よく笑ったりしている。
夏井いつきさんのおかげだな。東大生やらインテリ(志向)芸人がつくった句を、的確かつ簡潔に添削していくトークの見事さといったら。夏ちゃん先生が、俳句をグッと近づけた。
この週のお題は“イヤホン”。通勤、通学時によく耳に装着してるアレね。
ゲストは玉城ティナ、トリンドル玲奈のモデル系タレントに、初めて見る“ミスター東大2019”という俳優の木瀬哲弥。この初登場組と、高畑淳子、麒麟・川島の5人だ。
嫌味な奴がいないと、番組は盛り上がらない。今回は木瀬が恰好の標的か。自信のほどを訊かれ「正直あります」と言った瞬間、キスマイ・横尾渉が「みんな言うんですよ、東大生は」と容赦なく突っこむ。
木瀬の句は〈無線絶え耳に風見上げ、月〉。充電が切れたとき、風が聞こえ、思わず月を見上げた情景を詠んだという。無線絶えって、遭難したかと思ったよと、永世名人・梅沢富美男がやんわり指摘する。
そんな基本の描写もせずに、中七は字足らず、下五にはあえて読点と、これみよがしな作為をするところが、偏差値高いミスター東大ならでは。「頭の良い子が、ちゃんと考えたからできるいい句」と夏井先生は穏便にまとめましたが。
トリンドル玲奈は〈帰り道君とあいみみ夕月夜〉。イヤホンを片方ずつ分けあう“あいみみ”。梅沢さんは優しくホメた後で、上五の「帰り道」が気になると、ポツリ。「たとえば」とMCの浜田雅功に訊かれ、「急に言われても」とお約束の言葉を返す梅ちゃんが、いい味だしてる。
夏ちゃん先生も「おっちゃん、偉いんです」と受ける。「君」がどんな人か。長身なのか、大股に歩く人か。それを上五に書けば、カップルの姿が浮かぶでしょ、と。上五を「長身の」「大股の」とするだけで、リアルな句になる。先生も梅ちゃんも達人です。
第1位は、なんと玉城ティナ。〈蜩(ひぐらし)やイヤフォン外し立ち尽くす〉。素直で気持ちいい句だ。でも、それだけでは。微量の苦味とか哀しみがあればなと思う。
句集収録を目ざした梅ちゃんの〈口立(くちだ)てのカセットの声秋彼岸〉はボツになったけど、心に沁みた。大衆演劇では、父から子へと口立てで台詞を教える。カセットが普及すると、録音テープを聞き返して覚えた。先生は「誰の声か書け!」と一喝。お父さんと書くの。愛の添削だな。夏井先生と梅沢さん、2人の話芸で、「世界」の見方まで少し変わった私です。
『プレバト!!』
TBS系 木 19:00~
https://www.mbs.jp/p-battle/