ちょっと前、アイドルを美術館に連れてって『美術館女子』とか言い張って炎上してたんじゃなかったのか。「アイドルと巡る仏像の世界」はいいのかよ! こっちも燃やせよ! と思いながら見たがこれ、燃料が足りなかった。全体が湿気ってて火はつかない。美術館女子は人の心に火をつけるパワーはあった……しかしこっちは……。
ツッコミどころはいっぱいある。説明役の大学の先生、大学院で美術史を学び、仏像も好きというふれこみの「元アンジュルムの和田彩花さん」が聞き手、そして日替わりゲストに現SKEとAKBメンバー。各回のテーマに「フォーメーション」「センター」「プロデューサー」を持ってくるのは秋元康によって踊らされているAKBグループに仏像界をむりやり引き寄せた企画であります。ええ、古くは競馬、現在は競輪とかで涙ぐましく繰り広げられてきた「マニア人気のマイナー業界をなんとかメジャーにしようと、その業界に興味なさそうな有名人芸能人を呼んでくる番組」。
裾野を広げたい気持ちはわかるが、こういうのはだいたい「アイドルがいる」ことが全てみたいな内容になる。でもこれはNHKだし、アイドルと仏像の思わぬ化学反応と期待もしたのだが……「アイドルがいるだけ」でした。競輪と同じぐらい仏像好きな私としては、もっと仏像の魅力を打ち出せよと叫びたい。ついでにAKBグループのファンでもあるからこの負の相乗効果は哀しい。
先生が如来や菩薩を説明しながら、位の高い如来は質素な格好で菩薩はきらびやかに着飾っていると説明する。アイドルが「位が高いほうが質素?」って不思議そうにしてるんだから説明しようよ! でもスルー。
「あなたの干支の守り仏はこれです」「わあー強そう~」とか……マイナー業界で営々と繰り返されるコレ。仏像ファンもアイドルファンも両方別に嬉しくもないぞ。各回のテーマ追求も薄い。鑑真和上が中国から仏典や仏像を伝えて広げた名プロデューサーで、「秋元先生みたい」って言われても……(唐招提寺の人は気を悪くしないのか)。
聞き手の和田彩花が、そんなつもりはないんだろうがゲストのアイドルに対して微妙に偉そうにしてるように見えたのと、ゲストの大場美奈(SKE48)が、たぶん仏像にぜんぜん興味ないんだろうなあというのが丸わかりの、しかし必死に興味深そうに仏像見つめる表情と、ふと見せるうつろな目が印象的でした。他の日のゲストの古畑奈和や入山杏奈は実にうまく「こういう番組で可もなく不可もない対応のアイドル」を演じていたので、大場美奈に興味なかったがこれ見てちょっと「いい娘じゃないか」と見直した。仏像番組の収穫はそれぐらいでした。
INFORMATION
『趣味どきっ! アイドルと巡る仏像の世界』
NHK Eテレ 月 21:30~
https://www.nhk.jp/p/syumidoki/ts/5N8N91PYV7/episode/te/5ZP68W43W8/