従来渋い趣味だった「写仏」(仏像の絵を写すこと)。その世界をカジュアルな形で取り上げた本が話題だ。

「女性向け通販サイトで写仏セットが人気を集め、仏像にときめく『仏女(仏像女子)』も多い。そんなデータを元に企画しました。体のデトックスとしてヨガが流行していますが、写仏は心のデトックス。マインドフルネス(瞑想をベースにしたストレス対処法)への注目などと繋がる流行と捉えています」(担当編集者の仲田恵理子さん)

 タイトルにあえて「写仏」と入れず、本のデザインもポップに。類書のない中、絵のサイズや紙の厚さ、本の開きやすさなどひとつひとつ試行錯誤しながら、こだわって編集した。文章も、仏像に関する書籍を多数手がけるライター兼イラストレーターの著者ならではの、確かな知識とユニークな視点が光る。「色気がムンムン」といった意外な表現を楽しむうち、教養も身に付く。

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「刊行直後から順調に売れていたのですが、筆ペンを付録にする(期間限定)と企画したことで、またグッと数字が伸びました。『大人のぬり絵』ブームもある中、たくさんの色を揃える必要がなく、筆一本で始められる気軽さも魅力なのかもしれません」(仲田さん)

 国宝仏像を扱った第2弾との累計は14万部。恋愛や金運といった「ご利益」ごとに仏をセレクトした第3弾も刊行予定だ。仏の威光は、まだまだ広がりそう。

心やすらぐ仏像なぞり描き

田中ひろみ(著)

池田書店
2015年11月10日 発売

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2015年11月発売。初版8000部。現在13刷8万部