イギリスの国内外から信頼と尊敬を集め、「世界で最も有名な女性」と称賛されるエリザベス女王。今年、英王室史上初の在位70年という大きな節目を迎えたが、ここまでの道のりは平坦ではなかった――。「文藝春秋」8月号より「エリザベス女王 即位70周年 愛される理由」の一部を公開します。
国を挙げて祝福された「プラチナ・ジュビリー」
エリザベス女王は今年、英王室史上初の在位70年を迎えた。4月に96歳になったが、世界の王室において最年長の現役国家元首である。6月13日には、戴冠から70年と127日を数え、タイ王国のプミポン前国王(2016年死去)を抜いて、世界史上2番目に在位の長い君主となった。
女王即位70周年を祝し、イギリス政府は6月2日から5日を特別連休に設定。国内で「プラチナ・ジュビリー」と呼ばれる祝賀行事が華やかに繰り広げられた。
ジュビリーとは、節目に行われる祝賀や記念祭を指す。エリザベス女王の即位後、25周年の1977年にシルバー・ジュビリー、50周年(2002)にゴールデン・ジュビリー、60周年(2012)にダイヤモンド・ジュビリーが行われ、今回が4度目となる。
式典は6月2日、トゥルーピング・ザ・カラー(軍旗分列行進式)で幕を開けた。女王の公式誕生日を祝うこの行事はもともと、軍旗の色(カラー)を見せるためのもの。1200人以上の兵士と200頭以上もの馬が参加し、一糸乱れぬフォーメーションを披露した。
女王は、かつては軍服に身を包み、自ら騎乗して閲兵したものだったが、1987年からは王室メンバーと馬車に乗るようになった。そして今回はバッキンガム宮殿のバルコニーに杖をついて登場すると、手袋のまま涙をぬぐう一幕も。こみ上げるものがあったのだろう。
翌日のセントポール大聖堂の礼拝は、「体調に違和感を覚えた」として欠席。3日目にダービーが行われたエプソム競馬場にも足を運ばなかった。しかし最終日には再び宮殿のバルコニーに姿を見せ、国民の大歓声に手を振り、盛大な四日間を締めくくったのだった。