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「弟を産んで」と母親に懇願
即位70年ともなると、君主はエリザベス女王しか知らないという国民も多い。「女王は決して国民を失望させない」と、彼らは目を輝かせる。新型コロナウイルスが落ち着いた実感もあるのだろう。それにプラチナ・ジュビリーの経済効果は約1兆円とされる。イギリス経済復興の起爆剤の役目も果たしているのだ。
いまや人々の敬愛を一身に受ける女王だが、生まれついて「女王」だったわけではない。
1926年4月21日、ヨーク公アルバート王子(ジョージ6世)とスコットランド貴族のエリザベス妃の長女としてロンドンで生まれた。家庭内では、「リリベット」との愛称で呼ばれることになる。
当時、彼女の伯父にあたるエドワード8世が王位を継ぐ予定だったので、この一家は王位とは無縁と信じ、気楽な立場にあった。だが1936年、「王冠を賭けた恋」と呼ばれる駆け落ち婚の結果、エドワード8世が退位。リリベットの父ジョージ6世が王位を継いだ。これにより、リリベットに思いがけず「君主」の座がめぐってきたのだ。
10歳だった彼女は、自分を待つ恐ろしい運命を感じ、母親に「弟を産んで」と懇願したという(当時の英王室の王位継承は男子優先。2013年に長子優先に変更)。
こうして1952年2月6日、25歳の若さでエリザベス2世として即位した。女王(国王)であるとともに、現在は54カ国の英連邦の首長であり、うちイギリスを含め15カ国の英連邦王国で、形式的とはいえ君主の座に就く。