どの家庭からも必ず出る、ゴミ。身近な存在のはずだが、袋にまとめて集積所に持っていくだけで、ゴミについて詳しく知っている人は少ない。誰より詳しいのは、そのゴミを回収していく清掃員だ。

 ここでは、現役ゴミ清掃員でありお笑い芸人でもあるマシンガンズの滝沢秀一さんが、子どもにもわかりやすく「ゴミ」の裏側について書いた『すごいゴミのはなし: ゴミ清掃員、10年間やってみた。』より一部を抜粋。

 滝沢さんが「10年間、働いていてもよくわからない」という驚きのゴミの内容について紹介する。(全2回の1回目/後編に続く

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 実は、もともとやりたくて始めた仕事ではなかった。初めは仕方がなくゴミ清掃仕事についた。ほかに仕事がなかったからだ。

 僕は、お笑い芸人をやっている。

 でも、お笑いは、それだけで家族を食べさせていくのがとても大変な世界で、子どもができたときにアルバイトをしようと思ったんだ。その時、36歳。

 ところが、僕はどこにも雇ってもらえず、全部、電話口で断られた。少しでも、働きやすいところを探していたし、仕事に行ける日が限られていたせいかもしれない。

 そんなときに、友だちに紹介してもらったのが、ゴミ清掃という仕事だった。僕はもともと環境問題に対して思い入れがあるとか、ゴミ問題をなんとかしなきゃいけないから、ゴミ清掃の仕事に就こうと思ったわけではないんだ。

 だからびっくりしたよ、滝沢は。

「ゴミの世界」がこんなことになっているとは思わなかった。

 みんなはゴミ出しをしたことがある? 近所のゴミを集めるところ、つまり集積所に行くと、すごい量のゴミだなと思ったことない?

 僕らは1日に、その集積所のゴミを何百個も回収するんだ。

 はじめはきつかった。

 僕がゴミ清掃員になったのは2012年の9月。残暑も残暑。忘れもしない大残暑の9月2日にペットボトル回収をした。

 ペットボトル回収とは、資源であるペットボトルを集積所から回収する仕事だ。飲み終わったペットボトルは資源になるから、別で集めるんだ。

 首の後ろがジリジリと音を立てて焼けているような暑さだった。太陽を真後ろに、大量のペットボトルに苦しめられた。

 僕が働いていたその地域は、網にペットボトルを入れるルールなのだが、あまりの量に網からはみでている。暑いからみんな、たくさん飲み物を飲むのだ。暑ければ暑いほど、ペットボトルの量は増える。網からあふれたペットボトルは、風に飛ばされて道のあちこちに散らばっている。

「全部、拾って。」

 暑くてしゃべるのもやっとの運転手は、なるべくエネルギーを使わないように口を動かさずにしゃべる。立っているだけでも息切れするほどの灼熱のなか、1本1本拾いあげろって!?