2020年にコミックエッセイ『夫を捨てたい。』(祥伝社)を出版した漫画家のいくたはなさん。夫のモラルハラスメント(モラハラ)に悩みながらも、ワンオペ育児に奮闘するいくたさんの経験談がSNSなどで話題を呼んだ。
そして2021年9月には、『夫を捨てたい。』の後日談に位置づけられる新しいコミックエッセイ『夫にキレる私をとめられない』(KADOKAWA)を上梓。同書では、育児に協力的になった夫に対し、暴言を吐くなどのモラハラを行うようになってしまったいくたさんの“変化”が赤裸々に綴られている。
なぜ彼女は、夫に対してモラハラを行うようになったのか。自身のモラハラに、いつ、どのように気づいたのか。漫画化に至るまでの経緯と合わせて詳しく聞いた。(全2回の1回目/2回目に続く)
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夫のことばかり悪者にするのはフェアじゃない
――前作の『夫を捨てたい。』では、いくたさんが夫のモラハラに悩む内容となっています。一方で、『夫にキレる私をとめられない』では、いくたさん自身が夫にモラハラをする様子が描かれています。
いくたはなさん(以下、いくた) 前作では、「とにかく夫が悪い」という話を描きました。実際、夫のモラハラは酷かったし、すごく辛かった。ただ、あくまで私目線で描いたものだったんですよね。だから読者の方々が「いくたの夫は酷い!」と思うのは当たり前なんですよ。
でも実は、私が夫に辛く当たったこともたくさんあるんです。夫からしたら「妻だって僕に酷いことをしているよ?」と言いたくなる部分もあったはずですし、私も「夫のことばかり悪者にするのはフェアじゃない」と思ったので、『夫にキレる私をとめられない』を描くことにしました。
――自分がモラハラをした話を描くのは、勇気がいることだったのでは。
いくた 正直に言うと、描きながら「穴があったら入りたい」と何度も思いました。最初はInstagramで連載していたのですが、エピソードをアップするたびに、厳しいコメントも届きましたし……。夫に酷いことをしているから当然なんですけどね。