夫を傷つけるのに効果的だと理解していた
いくた 漫画家としての副業収入があったので、当時は夫よりも私の方が稼いでいました。それを盾にして、「私は家事も育児もあなたよりやって、お金もあなたより稼いでいる。それなのにあなたは、いったい何をしているの?」と夫に言ってしまって……。今は本当に反省しています。
自分の稼ぎを盾に相手を責めるのは、男女問わずやってはいけないことだとわかっているんです。でも当時の私は、それが一番夫を傷つけるのに効果的だと理解して、わざと言っていたんですよ。
――前作の『夫を捨てたい。』では、旦那さんにご自身の気持ちを伝えられないことで関係がこじれていきました。今度は逆に、ありのままの気持ちを伝えすぎて関係がこじれてしまった。
いくた 自分の気持ちを伝えないことで関係が悪化した経験があったから、「とにかく感じたことは、すべて夫に伝えなければ」と極端な思考回路になっていたのかもしれません。
今でも、「自分の気持ちは言わないと相手に伝わらない」と思っています。でも、相手のタイミングや許容量を考えずに自分の気持ちを言うのは、一方的に怒りをぶつけているだけなんですよね。
それなのに私は、「私たち夫婦もお互いに言いたいことを言い合えるようになったな」と、当時の関係に安心感を覚えていました。
そんな状態が続いていたある日、夫から「これは会話じゃないよ、相手の反論も許さず、一方的に怒りをぶつけるのはモラハラ。かつての僕がしていたことを、今はママがしている」と言われました。
「夫からされて嫌だったことを、自分がしている」
――旦那さんから「それはモラハラだよ」と言われたときの気持ちは?
いくた ゾッとしましたね。夫は何もしていないわけじゃない。むしろ、いろいろと協力してくれていたんです。私が会社員の本業と平行して漫画の仕事を頑張れていたのも、夫の協力があってこそでした。
それなのに私は、「まだまだ努力が足りない」「もっとがんばれ」と夫に不満をぶつけて……。夫に言われて初めて、「夫からされて嫌だったことを、自分がしている」と気づいたんです。
――ご自身の中で「夫に辛く当たっている」という自覚はあったんですよね。
いくた 先ほどお話しした「子どもを保育園に送るのを代わってほしい」とか、「保育園を休んだ時は仕事を休んで看病してほしい」というのは、夫にとって無理なお願いだと思っていなかった。だから、「そんなこともしてくれないなら、もっと頑張っている私に嫌味を言われてもしょうがない」と考えていました。
でも夫の立場に立ってみると、いきなり子どもを保育園に送ってくれと言われても、色々と仕事の調整をしなきゃいけないから、すぐには返事ができないですよね。当時の私は、そういうことまで考えられていませんでした。