“周囲の群衆はその場で立ったまま”に驚き
また同紙は日系アメリカ人市民同盟(JACL)のエグゼクティブ・ディレクターのデイヴィッド・イノウエ氏のインタビューを掲載し、「イノウエ氏は2018年、訪日の際に安倍氏に会った。とても温かく、よく話を聞いてくれた。日系アメリカ人の歴史について、そして第二次大戦の及ぼした日系アメリカ人への影響について話をすることができた。安倍氏が暗殺されたことを知った日はNHKワールドを午前2時までずっと見続けた。日本でこのような事件が起こったことに大きなショックを受けた」としている。
テキサス州ダラスの日本領事館の領事、サム・シチジョウ氏は、安倍氏が暗殺された際、周囲の群衆はその場で立ったままだったことに妻が驚いていたという。「もしアメリカで発砲があれば、周囲の人間は一目散に逃げます。でも日本ではおそらく、その音が銃声だったのかわからなかったのだと思います。この国の人のように頻繁に銃の音を聞いていないのですから」
海外メディアは安倍氏の外交手腕を評価
第二に海外メディアは、世界中の要人からの追悼メッセージとともに、安倍氏のレガシーについて大きく取り上げている。比重としてはこちらのほうにより力点が置かれていたように思う。全般的に海外各紙は戦後の日本において“安倍氏ほど大きな影響力を持った首相はいなかった”として、その存在感・権力の大きさについておおむね好意的に報じた。
各紙社説でも、安倍氏が政界のサラブレッドとして育った生い立ちや、2006年、戦後最も若くして首相に就任したものの一度は辞任し、6年後に返り咲くと「安倍一強」と言われた時代を作り出し、日本の首相としては最長の在職期間を達成したこと、2020年に辞任した後も「キングメーカー」として日本の政界で存在感を放ったことなどを紹介している。
英ガーディアン紙などは、金銭スキャンダルもあったが、「安倍氏の最大の功績は外交」と評価。「首相として常に外交のために海外へ出向き、日本の首相の中で最も多くの国を訪問し、日本の伝統的な枠組みからはみ出して世界中と貿易協定を結んだ」。安倍氏とトランプ氏の蜜月についての言及は多く、同紙は「安倍氏は、その外交手腕から『トランプの調教師』の異名を持つことも報じられた。実際、米国が関税を上げることを諦め、米軍基地の負担増額を取りやめた」などと報じた。