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飛んでしまう踊り子や、劇場とケンカしていなくなった人も…

 一方で、踊り子からの不満や要望が耳に入れば、本人からは言いづらいだろうと、さりげなく劇場に伝えるなど、潤滑油としての役割も意識していたという。すべては、この文化の維持のため。ファンが情熱を持ち、観客として支えているように、谷口さんも自分の立場から劇場を応援し続けているのだ。

 また、踊り子たちとの思い出は決して楽しいものばかりではない。ファンや関係者たちに支えられ、華々しく引退興行を迎えられるのは、数十人にひとり。悲しい別れをしてきた踊り子も数多いという。

「飛んでしまう踊り子さんがいれば、劇場とケンカしていなくなった人や、いつの間にか辞めていった人もいます。病気になってしまった人、自殺してしまった人もいる。舞台に命を捧げて一生懸命やってきても、全員が円満に引退できる世界ではないんです」

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ステージでの“芸”の様子 ©️谷口雅彦

 だがそれ以上に、かけがえのない思い出はたくさんある。前述のエピソードなど、ごくごく一部だ。ある踊り子が、「不思議だよね、谷口さんが追いかけた踊り子はなぜか長く活躍するって、お姉さんたちがみんな言ってるよ」と谷口さんに言ったこともあったという。

 谷口さん曰く、ストリップにはほかの風俗と決定的に違う点があるという。

「ステージに立っている踊り子さんをお客さんは見上げるんです。まるで観音様を拝んでいるみたいに。裸だけではない“何か”を見て、よろこびを味わっているんですね。ある踊り子さんが、『私たちが舞台から降りないのは、フロアダンサーではなく踊り子だから』と教えてくれましたが、我々はまさにその空間が好きで、いつまでも残したいと思っているんです」

かつては庶民の娯楽として数多くの劇場があった ©️谷口雅彦

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