戦後に始まった大衆芸能・ストリップ。踊り子がステージで舞いながら、徐々に衣装を脱ぎ、肌を見せていくエンターテインメントだ。

 全盛期には全国に約300軒の劇場があったが、2022年現在は20軒以下になっているという。傍目には衰退の一途をたどっているように見えるが、一方では女性客が増加し、一種の“芸術”としてメディアに取り上げられる機会も増えている。

 そんなストリップの世界を約30年にわたって撮影し続けてきた写真家・谷口雅彦さんに、その魅力や変遷を聞いた。(全2回の1回目)

ADVERTISEMENT

谷口雅彦さん ©️文藝春秋

◆◆◆

“花電車”に自縛ショー...「ジャンルの枠を超えている」

 写真家の谷口さんは、1992年からストリップの撮影を始めたという。これまでの写真家人生で約100の劇場を回り、500人以上の踊り子にカメラを向けてきた。

 撮影をはじめた当時のストリップ劇場では、踊り子だけではなく舞踏家やお笑い芸人など、さまざまな人が登場していたという。最後に一瞬でも裸になるシーンがあればなんでもありだったため、今とは異なりカオスなジャンルのショーが行われていた。

 一般的には“エロティックなイメージ”を持たれがちなストリップだが、谷口さんは「ジャンルの枠を超えている」と説明する。

「例えば“花電車”という女性器を使った芸があります。踊り子さんが水槽を持ってきて、そこに金魚が2匹いる。それぞれ太郎君、花子ちゃんと呼んで、性器に入れていく。そして水槽にまたがって、『まずは太郎ちゃん』『続いて花子ちゃん』と1匹ずつ出していくんですね。

かつてストリップ劇場で行われたという自縛ショー ©️谷口雅彦

 また、自縛ショーもあった。踊り子さんがいろいろな道具を使って、自分で自分の体を痛めつけるんです。最後は絶叫しながら白目をむいて失神してしまう…まさに人間の極限でした。踊り子さんも観ているお客さんたちも本気で、すごく緊迫感がありましたね」

 そんな独特な舞台では、踊り子と客の掛け合いが、そのままコントのようになることもあったという。

 踊り子が脱いだ下着を客席に投げ、キャッチした人にプレゼント、というパフォーマンスがあった。熟女の踊り子さんが下着を投げると、それを取った常連客がステージに投げ返したのだという。それが繰り返されて、会場が爆笑に包まれたこともあった。一面的なエロという側面だけではなく、踊り子と客が一体になって、劇場の空気をつくり上げていたとも言える。