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「どの劇場でも個室のドアが少しだけ…」 30年間ストリップを撮影した写真家が語る、超人気ストリッパーの“気遣い”のワケ

「どの劇場でも個室のドアが少しだけ…」 30年間ストリップを撮影した写真家が語る、超人気ストリッパーの“気遣い”のワケ

写真家・谷口雅彦さんインタビュー #2

2022/07/25
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なぜ踊り子たちは谷口さんに心を許したのか?

「踊り子さんのタバコが写真に写りそうになって、『吸ってないことになってるから、これはまずい!』ってどかして撮ったこともありましたね(笑)」

 さらに、ファンがプレゼントした花やケーキがあれば、さりげなく写真に収める。自分があげたものが、好きな踊り子と一緒に写っていたら、ファンはそれだけでも嬉しいものなのだ。

 では、なぜ踊り子やストリップ関係者たちは谷口さんに心を許したのだろうか?

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 本人が理由のひとつとして話すのは、「文化としてのストリップを残すことに、使命と責任を持って取り組んできたことが伝わったからではないか」ということだ。

©️文藝春秋

「出版不況で雑誌もどんどんなくなっている。一度、ストリップの連載が途絶えたときがあったんです。そのときはストリップの同人誌を関係者たちと作りました。劇場に置いてもらって1冊1000円でお客さんに販売して…正直、僕らの儲けはありませんでしたが、とにかく劇場の記録を残しながらファンにも喜んでもらうために、メディアのあり方を模索していったんですね」

    同人誌のほかにも、踊り子さんのDVDや写真集の制作など、谷口さんは利益を度外視して「ストリップの記録を残す」「ファンに喜んでもらう」ための活動を行っていった。その思いに多くの踊り子や劇場関係者が共感したからこそ、信頼関係が築かれていったのだ。

踊り子の楽屋での様子 ©️谷口雅彦

 ただし踊り子とは、基本的には写真家と被写体という関係性であるため、一定の距離感は保ち続けているという。いくら親しくなっても、特定の踊り子や劇場に肩入れすることもしない。ストリップ業界の表情報から裏情報まで自然と耳に入ってきたが、素知らぬふりをつらぬいた。

「特に、『このお姉さんはギャラをいくらもらっている』という話は聞こえないふりをしました。本当は知っていても、絶対に言わない。そこから嫉妬やねたみが生じかねませんから」

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