1ページ目から読む
2/5ページ目

 居場所確認のためのスマホのアプリを入れていましたので、位置を示している駅に向かいました。途中で、(示している点が)動き出しました。その時点では、もしかしたら家出かもしれない、とも思いました。位置情報を追っていると警察署を示しました。でも、『人身事故』という話もあったので、ものすごく不安でした」(サトシさんの父親)

 警察署に着いた父親は「駅で事故があったと聞いたんですが……」というと、すぐに保護者とわかったのか、警察官は「こちらにどうぞ」と指示した。「とにかく会わせて」と言ったが、「お待ちください」というやりとりの繰り返し。1時間以上経った後、警察署の裏手にあるプレハブ小屋に案内された。サトシさんはビニールシートに包まれていた。

前日と当日に教諭から指導を受けていた

「警察は自殺と判断したようです。遺書はなく、妻にLINEで送ったメッセージが最後のものでした。その時の様子を見ていた女性がいました。飛び込む前、サトシはベンチに座って、アイスクリームを食べていたようです。食べた後に帰るつもりだったのか、最後のつもりで食べていたのかはわかりません。そのうち、女性は各駅停車に乗りますが、サトシは乗らないのかと思っていたら、音がした、との証言でした」(同前)

ADVERTISEMENT

亡くなったサトシさんのスマホ

 同日の19時過ぎ、学校から電話があった。「すぐにご自宅へ伺いたい」とのことだった。学校側は「前日と当日に指導をした」とのことだった。前日の指導については、母親は知っていた。学校から「指導をしたので遅くなった」との連絡があったからだ。

 どんな指導があったのか。「調査報告書」によると、12月25日、部活副顧問X教諭はサトシさんを教官室に呼び出した。「思い当たることはないか?」と聞くと、「両替機の件ですか?」と答えた。このときの指導は、X教諭の住所をグループLINEに投稿したことだった。

『お前ら!』といった厳しい言葉は日常だった

 X教諭が住所を教えたのは、顧問をしている部活の生徒に年賀状の送り先を知らせるため。サトシさんはその住所を部員で共有しようと投稿した。「ふざけるんじゃないよ」「人の気持ちを考えられるようになれ」などと叱責された。その上で悪意のある行為という前提で1時間ほど指導された。

 密室で、しかも単独で行われた指導であり、威圧的な言動もあった。慕っていた教師から、それまでとのギャップを感じる指導で精神的ショックを受けたと、報告書では推測する。学校による個人情報の取り扱いについての指導も「不十分」と指摘された。