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学校を責め立てたいわけではない

「学校は『直接関わった先生が話をします』と言ってきました。年末には断片的に聞いていましたが、翌年1月8日に学校へ荷物を取りに行った際、『時系列がわかるようにお願いします』と伝えました。そのため、1月20日と2月10日に説明を受けました。校長と教頭、指導に関わった先生がきました。また、自殺を予見できなかったとの説明でした。当日の指導の内容は、Z教諭のことなど、報告書を読んで初めて知りました。なぜ、Z教諭のことはこれまで説明がなかったのか。本当に驚きでしかない。1人の先生から指導されるだけでもプレッシャーなのに、2人から指導されていたというのはショックでした」(父親)

 報告書ができて、すでに半年が経った。

「すぐに学校側が謝りに来るのではないかと思ったんです。しかし、なかなか連絡が来ないので、『どうなっているのか?』とメールをしたんです。サトシの名誉回復と、学校がしたことの公表をお願いしたいと思っています。ただ、学校を責め立てたいわけではないのです。公表することは、絶対に再び同じことを起こさないようにするメッセージになります。なかったことにしたり、公表しないということはあり得ないです」(同前)

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スペースシャトルの模型。サトシさんは宇宙に関心があったという

学校側が示した再発防止策は

 4月10日、学校側が調査報告書に記載した事実を認め、サトシさんの自宅最寄駅に近い貸会議室で、校長らが謝罪。再発防止策を示した。校長や教頭、関係した教諭は懲戒処分としたことを報告した。ただし、懲戒の内容は遺族に伝えられていない。

 学校側は遺族への謝罪について、「お預かりした生徒を家庭に無事に帰すことができなかったことについて、そして、調査報告書において問題があったと判断された当該生徒への指導や聴き取りについて、当該生徒とそのご家族の皆様に謝罪する旨をお伝えいたしました」と回答した。

 また再発防止策については、(1)生徒指導等での聞き取りについてルールを明文化した規定の作成と周知徹底、(2)生徒指導に関する教員研修の定期的実施、(3)子どもの自殺や予防に関する知見を深める教員研修の定期的実施、(4)今回の報告書を利用しての学内研修の実施、(5)在校生のストレスの程度を把握するためのストレスチェック制度の導入検討、(6)カウンセラーによる「命の大切さを考える授業」の定期的実施――をあげている。

 不適切な指導を契機とした自殺に関する公的統計はないが、教育評論家の武田さち子さんが新聞報道等をもとに集計したところ、1952年以降、昨年までに121件(未遂15件を含む)。このうち、88年までの36年間は21件。しかし、平成となった1989年以降増加しており、32年間で100件になっている。また、暴力が伴われたのは88年以前は9件。89年以降は11件。ほとんどが、暴力を伴わない指導が背景にある。

写真=渋井哲也