この時の面談の目的は問い合わせの件での事実確認だ。しかし、続けて、前日の指導の続きもした。そして「念のため親に本当かどうか確認していい?」と尋ねると、サトシさんは間を開けて、「はい」と答えた。加えてX教諭は「もし嘘をついているなら、処分も厳しくなる」などと言った。このやりとりの途中で別のZ教諭も会議室に入ってきていた。指導後、サトシさんは部活に参加せず、学校を後にした。
目撃した生徒の証言を調査委は取り上げず
「ゲーセンでお金を取ったかどうかで指導された話は知りませんでした。正直、密室での指導は、先生の証言に頼るしかありません。最後の指導は密室ですが、会議室から出てくる状況を目撃している生徒がいました。その生徒によると、『防犯カメラに映っているんだからな』と言われていたと言います。この生徒の証言は、報告書に反映されていません」(父親)
防犯カメラの発言をしたのはZ教諭。報告書では、「防犯カメラ映像チェックできるって」と言ったことになっている。遺族によると、目撃した生徒の証言とは違うが、調査委はその生徒の証言を取り上げていない。
最後の指導を受け、サトシさんが学校を出たのは、目撃した生徒によると12時30分ごろ。最寄駅の改札を入場したのは、ICカードの記録では12時47分。亡くなった時間までホームにいたが、その時間は5~6分だ。サトシさんは上着を脱ぎ、バッグとともにベンチに置いた。スマートフォンは、上着のポケットの中にあった。
指導の不適切さと自殺の関連性
報告書は、生徒指導について苦言を呈している。
〈教員室では、防犯カメラをちゃんと見た方が確実ではないかという話も出ていたが、X教諭はサトシさんが来たためそのまま聴き取りに向かった〉
〈この時点では、防犯カメラの確認すらしておらず、他の生徒に対してもサトシさんがゲームセンターに行ったかどうかについての確認もできていない〉
そして、〈近年、「指導死」と呼ばれる学校・教員の指導を原因とする児童・生徒の自殺の事例が報告されている。……(中略)……本件では、威圧的指導による子どもへのダメージが大きかったにもかかわらず、子どもを追い詰めたまま事情聴取を終了しており、教育的配慮が不十分であった〉と指摘した。その上で、〈2日間の指導が自殺の大きな原因となっていることは動かしがたく、指導の不適切さと自殺の関連性は認められる〉と結論づけている。
サトシさんの死後、学校は遺族に事情説明にきたものの、十分なものではなかったという。