〈怒鳴りつけるなど冷静さや客観性を欠いた問題を含む指導であったにもかかわらず、X教諭はさらに翌日も指導を継続することを伝えるなど、サトシさんに重いダメージを与えたままフォローを行わずに同日の指導を終了させた〉

〈2日間の指導が自殺の大きな原因となっていることは動かしがたく、指導の不適切さと自殺の関連性は認められる〉(いずれも「報告書」より)

 2017年12月、都内の私立中学1年のサトシさん(仮名、享年13)が、学校の最寄駅構内で電車にはねられて死亡した。警察は自殺と判断した。

ADVERTISEMENT

 学校は、遺族の要望に応じ、調査委員会を設置して、22年1月に「第三者委員会報告書」がまとめられた。筆者が閲覧した「報告書(公表版)」によると、サトシさんは複数の教諭から、無実の罪を着せられた指導を受けた。調査委は「自殺直前の指導が自殺の要因」と推定した。つまり、不適切な生徒指導が自殺につながる、「指導死」だった。

仏壇の前で手を合わせる遺族

「今までありがとう」LINEで母親にメッセージを送信

 ただ、遺族は一定の評価をしながらも、指導される原因となったことが公表されていないことから、「名誉回復は不十分」と不満を漏らしている。

 筆者の取材に対して、学校側は7月14日付けの文書で、「本件の事実関係が全て明らかにされているわけではなく、そのなかでの判断でございますが、いずれにせよ指導と本件自死に関連性があると調査報告書で指摘されたことについては真摯に受け止めております」などと回答した。

 遺族によると、17年12月26日12時52分、サトシさんは母親にLINEで「今までありがとう」とのメッセージを送信した。不安に思った母親は、13時10分過ぎ、「部活に出ているか確認してほしい」と担任に話した。所在確認したが、電話を切った頃、通学に利用する私鉄で人身事故があったとの校内放送が流れた。部活の副顧問X教諭が探していたが、サトシさんの鞄が駅のホームにあった。13時40分、警察から学校へ、飛び込んだのは生徒の可能性が高いとの電話があった。

サトシさんが亡くなったときに背負っていたバックと中身

警察官に案内されたプレハブ小屋には

「私は会社にいました。妻から再度、電話がありました。『駅で人身事故があった。サトシかもしれないという話があるみたい』というので、どこに行っていいかわからず、とりあえず駅に向かいました。