文春オンライン
「♯ちむどんどん反省会」タグが盛り上がる一方で…「具体的に演じていいのだということに驚いた」と母役・仲間由紀恵(42)が語った場面とは

「♯ちむどんどん反省会」タグが盛り上がる一方で…「具体的に演じていいのだということに驚いた」と母役・仲間由紀恵(42)が語った場面とは

CDB

2022/07/29
note

ボロボロになっていた仲間由紀恵の台本

「なんくるないさ」は言うまでもなく、連続テレビ小説『ちゅらさん』で一躍流行語になった沖縄語である。放送当時、それは細かいことを気にしない、南の楽園に生きるおおらかな沖縄人の考え方として東京のメディアに消費された。

 だが、「なんくるないさ」の前には本来、「まくとぅー(真)そーけー」がつく。誠の道、正しいことをしていれば、自然とあるべき姿になるものだ、という、過酷な運命や困難を前にした覚悟に満ちた言葉だ。そして『ちむどんどん』の脚本は中盤のクライマックスで、かつて流行したその言葉を「正しいことができなかった」という、戦争に対する悔恨と反省の言葉として再び連続テレビ小説の放送に乗せた。

2006年、『大奥』制作発表会見での仲間由紀恵 ©文藝春秋

 仲間由紀恵は『ちゅらさん』が日本に沖縄ブームを巻き起こした時には既に芸能界にいた。東京のメディアや全国の大衆に沖縄をポジティブなものとしてイメージさせるその効果も、そしてそれが置き去りにさせるものも見てきた世代である。日本中に愛されたこの沖縄語を、ある意味では裏返すことになるこのシーンの重さを、誰よりも感じていたはずだ。

ADVERTISEMENT

「第15週の台本を初めて読んだときは……(胸が)痛かったですね。痛いことは、痛いと感じてもらえるように伝えないと、なかなか伝わらないもの。痛すぎる、むごすぎる映像を見てもらうのは違うとしても、チクッと痛みを与えるくらいでないと印象には残らないので、『この台本なら大丈夫』と感じました」

『TRICK』主演の仲間由紀恵 ©文藝春秋

 公式サイトのインタビューで、仲間由紀恵はそう語っている。冒頭のスタッフの談話が物語るように、台本が「何度開いたのか」というほどボロボロになるまで彼女はこのシーンを読み込み、あの「まくとぅーそーけー、なんくるないさ」という本来の沖縄語を視聴者に届ける瞬間に備えてきたのだろう。

 沖縄の歴史が、なんの前置きもなく「なんくるない」はずがないのだ。仲間由紀恵にとって、『ちむどんどん』への出演は、置き去りにされた言葉の半分、「まくとぅ(真)」をもう一度語りなおす舞台だったのだろう。

 このシークエンス、第15週『ウークイの夜』は、7月30日の深夜2時40分から、NHK総合で1週まとめて再放送される。そしてその2日後、8月1日の夜10時には、NHK総合である特別番組が放送される。