2011年、ある衝撃的なニュースが巷間を騒がせた。大手製紙会社・大王製紙の会長だった井川意高氏が会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部に逮捕されたのだ。
逮捕の事実はもとより、それ以上に世間に衝撃を与えたのが、カジノでの負けを埋め合わせるため子会社から「106億8000万円」という大金を借入れていたことが明らかになったことだった。
17年に4年間の刑期を終えた井川氏は、この6月に『溶ける 再び そして会社も失った』(幻冬舎)を出版した。そこで明かされたのは、出所後に再びカジノへ足を踏み入れ、再度9億円もの大金を溶かしたことだった。
ギャンブルに取りつかれた男は、なぜ再び沼に足を踏み入れたのだろうか――?
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ギャンブルで味わった“脳髄が痺れる感覚”を味わいたくて
「精神鑑定を受けたらギャンブル依存症だと言われました。でも、僕自身はそんなことはないと思っているんですよ。遊びのなかで何が好きかと言われたら、ギャンブルが好きなだけで、その程度なんですよ。
実際に刑務所に入って、ギャンブルができない時は、やりたいなんて一切思いませんでしたから。まぁその程度といいつつも106億円も溶かしてしまったんで、自分でも限度は超えていると思いますが……」
淡々と語る井川氏の口調からは、100億円を超える金額を失ったという悔恨や、それでもまたカジノに足を向けてしまったという後悔の念を感じることは全くない。
――一般人の感覚からすると、106億円もの大金を失ったら、二度とカジノに近づかないのではないかと思います。出所後に再びカジノに行ったのはなぜなのでしょうか。
井川 普通は「二度とギャンブルなんかするもんか」と心に誓うと思うんですけどね。なぜか出所するとふと、ギャンブルで味わった“脳髄が痺れる感覚”を味わいたくなった。そう思ったら居ても立ってもいられず、すぐに3000万円をバッグに詰めて、また韓国のカジノに行ったんです。