私の場合は1000万円になったら、「次は2000万円だ、その次は3000万円だ」と終わりがない。本物のギャンブラーにはゴールがないんですよ。結果的にその韓国で勝った9億円も全部溶かしてしまいましたから。
韓国で9億円負けた後に、シンガポールのカジノへ
――9億円ものお金が手中から消えるという感覚がまったく想像できないんですが……。
井川 そこは額によって変わらないと思いますよ。主婦が旦那のへそくりにまで手を出して、それでも足りずに消費者金融からお金を借りて、「この次の金策はどうしよう……」とぞわぞわするケースってあるでしょう。それと同じ感覚です。
実際にバカラをしている様子も、周りからするとディーラーと2人で淡々とやっているように見えるみたいです。額が大きいと一回一回、はしゃぐかと思われがちですけど、全然そんなことはなくて。VIPルームではありますけど、やっていることは静かにカードをめくっているだけ(笑)。
――出所後に再び大負けして、そこで「ギャンブル卒業」とはならなかった?
井川 実はいまはもうカジノに行ってないんですよ。韓国で9億円負けた後に、シンガポールのカジノに行ったんです。当初の軍資金だった1000万円がなくなり、デビットカードの限度額までおろして、さらに1500万円。それも溶けたので、日本にいる知り合いに電話して、シンガポールに住んでいる知人の口座にお金を振り込んでもらって、結局それもなくなったのでトータル4000万円の負け。
今は96度のスピリタスを飲んでいる時が一番楽しい
その間、カジノに1か月間延々とこもってバカラをし続けたら、さすがに飽きましたね。いまは“バカラED”の状態ですよ。そのあとちょうど新型コロナの影響で海外にも行けなくなったので、それ以来カジノは行ってないです。
――それだけ負けたらカジノにはもう二度と足を踏み入れない?
井川 正直わからないですね。一連の出来事を本に書いたことで人生を振り返りましたけど、決して悟ったわけではないですからね。周囲の人からも「井川さん、またやりそうだね」って言われています。
今は毎晩飲み歩いて、96度のスピリタスを飲んでいる時が一番楽しいですね。アルコールだとギャンブルと違って生物的な限界がありますから(笑)。深みにはまりすぎないからちょうどいいんですよ。
インタビュー撮影=釜谷洋史/文藝春秋
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