ディーラーと文通し、刑務所内で高級車を大量購入
――そもそも106億円を失っているわけで、原資はどこから……?
井川 もちろん106億円は大金です。ただ会長職を首になったとはいえ、大王製紙本体やグループ会社の株を持っていたので、それを売ったりして工面しました。刑務所にいるときも、自動車雑誌を取り寄せて、刑務所内から馴染みのディーラーに文通で指示しながら、限定版のフェラーリを買ってもらったりしていましたから。
当然、刑務所に入っているので実際に車を眺めたり乗ったりすることはできないんですけどね。それでも「刑務所から出たら、どの車に乗ろう」とか考えているのが楽しかったんです。
――普通の人とは感覚がだいぶ違いますね。
井川 買いそろえた車は、たぶん20台くらいだったのかな。全部、渋谷にあるセルリアンタワーの地下の駐車場に止めていたんです。駐車場代が1台で8万円かかるので、毎月100万円以上かかっていたんですよ。出所後になんだか急にバカらしくなって、刑務所を出たあとすべて手放しましたね。
結局、車に乗るのが楽しかったわけじゃなくて、刑務所内で「車に乗ってどこにいってみようか」と考えている時間が楽しかったんだと思います。そうして車に飽きると不思議なものでまたカジノ熱が出てきたんですよね。
本物のギャンブラーにはゴールがない
――そこから再びギャンブルの「沼」に足を踏み入れるわけですね。
井川 韓国のカジノではまず、4日で3000万円が9億円まで増えました。全部バカラです。ただ、過去には150万円まで負けが込んでから、一気に23億円まで増やした経験があったんです。あの時の脳髄の痺れを経験してしまうと、どうしても物足りなさを感じてしまいました。
ギャンブルって「臨死体験」なんですよ。使ってはいけないお金にまで手を出して、「さすがにこれ以上負けるとやばい!」というところから、運の流れがまわってきて、一気に勝ちを積み上げていくことがある。“マジック・モーメント”とか言われますけど、そのときの脳髄が痺れる感じは何にも代えがたいんです。
――9億円ものお金を手にしたら、「この辺で勝ち逃げしよう」という考えにはならないんですか?
井川 9億円の時点でやめられる人は、そもそも9億円まで増やせないんですよ。100万円が1000万円になって、「あ、これで欲しい車が買えるからやめよう」と思える人は、逆に1億円までは増やせない。