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仕事は楽しいというよりも義務感が強かった

――ギャンブルで失ったのはお金だけではなく、大王製紙の元会長という肩書や社会的地位もあったと思います。それを失った後悔はありますか?

井川 逮捕されたことで迷惑をかけてしまった人たちには申し訳ないことをしてしまったなと思っています。ただ、大王製紙の会長という座を失ったことに対する未練は一切ないですね。会社の経営者として、「これからどうすんだ」って頭を悩ませ続けるくらいなら、今みたいに毎晩酒を飲んでるほうがよっぽど気楽でいいですよ。時間が一番有限じゃないですか。自分のためだけに時間を使えるのが一番の幸せですよ。

 

――経営者としての仕事自体はお好きだったんですか?

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井川 正直、経営者時代は砂を噛むような思いでしたからね。ただ、創業者の家族というだけで役員になった、社長になったとは言われたくはなかったので、誰よりも仕事はしました。マーケティングの会議に出れば、誰よりもアイディアを出せるように、必死で「ああでもない、こうでもない」と考えていました。

 だから楽しいというよりも……義務感が強かったですね。「やって当たり前だろう」というか。周囲もそういう目で見てきますしね。

 

刑務所に服役したのはいい経験だった

――創業家出身ならではのご苦労ですね。

井川 父親がめちゃくちゃ理不尽な存在でしたから。子供の頃から「あれやれ、これやれ」と言われ続けていました。私が大王製紙にいたころ、父親がいる顧問室に呼ばれたら、灰皿や湯呑が飛んでこないか、いつもひやひやしていました。

 そんな親父だけに、2011年に私が逮捕されるとなったときは、1時間以上も罵詈雑言を浴びせられました。でも、父は2019年に亡くなったんですが、そのときに怒られたっきりで「意高のせいで会社がこんなことになった」とか、私の悪口や愚痴は一言も言わなかったと聞きました。