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家族を長年苦しませてきた認知症の問題行動が消えた! そのわけは……

親が認知症かもしれないと思ったら──高瀬義昌医師インタビュー ♯2

2017/12/29

ベンゾジアゼピン系の薬には要注意

──おじいちゃんが処方されていたデパスは、高瀬先生が以前から問題を指摘しているベンゾジアゼピン系の薬ですね。ベンゾジアゼピン系の薬にはほかに、ハルシオン、レンドルミンといった薬があります。 

高瀬 日本はどうもベンゾジアゼピン系の薬を安易に使う傾向があるんだよね。WHO(世界保健機関)もそう指摘しているし、厚労省のガイドラインでもベンゾジアゼピン系向精神薬の使用には注意するように言っているんだけど。おじいちゃんに起きていたのは「夜間せん妄」。ベンゾジアゼピン系の薬はせん妄には効果がありません。

──抗認知症薬も、効果が現れる人がいる一方で、興奮したり、暴れたりという副作用が出る人もいるといいますが。

高瀬 別の93歳のおばあちゃん(B子さん)はもともと冗談を言うのが好きな、明るい人だったんだけど、初期の認知症と診断されて12種類の薬を飲むようになってから、人が変わったようになってしまった。体がぴくぴくけいれんしたり、「死んだおじいちゃんがそこに立ってる」と幻覚を見たりするようになり、一日中ふさぎ込むことが増えました。息子さんはタクシーの運転手をしていたんだけど、目を離すとパニックになったり、窓から飛び降りようとしたりするものだから「もう仕事を辞めるしかない」って思い詰めるほどだったんです。

高瀬義昌さん ©三宅史郎/文藝春秋

アクセルとブレーキを一緒に踏んで脳を混乱させてしまっている

──最近、介護離職も大きな問題になっていますね。

高瀬 このおばあちゃんはアリセプトという抗認知症薬を飲んでいたんだけど、それと一緒に抑制系の抗精神病薬を飲んでいました。これが悪かった。アリセプトで脳を活性化させて、抗精神病薬で抑える。いわばアクセルとブレーキを一緒に踏んでいるようなものでしょ。これじゃ脳が混乱するのも仕方がないよ。これも6種類に減薬しました(表2参照)。あとは注意しなければいけないのは認知症の原因となっている病気が1種類とは限らないということ。

表2:B子さんが飲んでいた12種類の薬(上)と高瀬医師により減薬した後(下)のリスト(高瀬義昌『認知症、その薬をやめなさい』中の表をもとに作成)

 ──異なる種類の認知症にダブルで罹患しているということですね。

高瀬 ダブルの認知症、多いですね。「ダブルはハイボールだけにして」ってボク言うんだけど(笑)。純粋なアルツハイマーは3分の1くらい。ベースはアルツハイマーでもあとの3分の2は脳血管障害を合併している。先日もこんな患者さんがいたの。アルツハイマー型の認知症で、心臓の手術をしてよくなったものだから、別荘に出かけたら、その次の日からしゃべれなくなって、ご飯も食べられなくなり、おしっこも漏らすようになっちゃった。慌てて東京に戻ってきて調べたら、脳の中に血腫があった。2時間の手術で血腫の方の症状はすっかり治って、「もうこんなところにいられない。早く家に帰せ」って頭に穴をあけたまま家に帰っちゃったんです(笑)。