――お話を聞いていると、昔ながらの味を守る店よりも、新しいアイデアを取り入れて試行錯誤している店のほうが掟さんにハマるのかなと。
掟 自分が昔住み始めた頃、中野には全然良い店がありませんでした。でも1996年くらいに「中華そば青葉」がオープンして人気になるにつれて、ただ昔からあるだけのラーメン屋は潰れていった。それで中野がラーメン激戦区みたいになった結果、ラーメン以外のおいしい店も増えて、街全体の飲食店の質がぐっと上がりました。
ラーメンって昔は鶏ガラで出汁を取れば充分だったのに、今は豚骨やら魚介と乾物も何種類も使ってダブルスープ、トリプルスープが当たり前ですよね。ラーメンに限らず、味の世界は日進月歩です。
ただネタを切って握るだけと思われがちな寿司も驚くほど進化している。ネタを高湿度冷蔵庫に入れて熟成させたり、ネタごとの温度管理を追求したり……。昔から続く江戸前鮨の分野でもどんどん革新が起きているんです。もちろん昔ながらの味を守った上でうまい店もありますが、自分の好みにハマるのは、新しい何かをやろうとしている店のほうですね。
――音楽においても、刺激のあるもののほうが好きだと話していますよね。
掟 未知のものに惹かれる性分なんでしょうね。みんなが知っていて、たくさんの人が「良いね」と言うような音楽よりも、「こんなの聴いたことがない!」と思わせてくれる音楽にハマります。それは食べ物においても同じことで、「こんなもの食べたことがない! 一体どうやって作ってるんだろう!?」と驚くような味を追い求めています。
成人病デビューしても、突き進む食の道
――先ほど「俺はすぐ腹一杯になっちゃう」と言っていましたが、食べることが好きでも、たくさんの量を食べるわけではないんですね。
掟 食べる量自体は普通というか、むしろ少ないほうじゃないですかね。ラーメン屋でも替え玉もしないし、サイドメニューでご飯つけるのもなし。できれば腹八分目で帰りたいんですよ。
おいしかった味の記憶が満腹感で薄れてしまうのが嫌で。「また食べに行かなきゃ!」という気持ちになるために、あえて満腹にならないようにしています。
――掟さんは今年54歳になりましたよね。健康面とかは……。
掟 それは気にしちゃダメ!
――ダメですか!